2006/07/19

山本富治翁のこと - 松尾英三さん運転免許返上 -

 ほぼ一日おきのペースで本欄の執筆を始めて早二週間。反応は概ね好評だが、ブログ(ネット)への書き込みがないのは、ちと寂しい気もする。

 そんな折、元島原鉄道社長の松尾英三さん(長崎市在住)からお手紙をいただいた。ご本人の了解も得ているので、内容の抜粋(同窓会誌への寄稿の一節)を紹介させていただく。

 さらば運転免許証=私事で恐縮ながら、二ヶ月前に四十三年間保持してきた運転免許証に「おさらば」した。哀惜の念しきりだった。

 軽いスピード違反は数々あれど人身事故はない。でも目が霞み反射神経も弱ってきたことをいさぎよく自覚して「返上」を決断した。

 まもなく七十五歳になる諸兄の技能が抜群なることは信じて疑わないが、まあ、いつの日か返上か失効の折の参考にしてください。〔※後は事務手続きの諸説明〕

 元交通安全協会長の言葉だけに「含蓄」深い。余計なお世話だが、愛車のグリーンのローバー(英国製)はどうされたのだろうか。叩き売って趣味の油絵の道具にでも化けたかな。

 ところで、老人ドライバーの話で思い出した。山本屋の先代、故山本富治翁のことだ。確か晩年に乗っておられたのは白色のトヨタ・マーク?だった、と記憶しているが、前後のバンパーは傷だらけだった。

 ある時、出張か何かで国道34号線を大村空港に向かって疾駆していた山本翁の車を、白バイ隊員が制止した。

 「ちょっとスピード出し過ぎですよ。免許証見せてください」。指示通り差し出して見せると、「えっ、山本富治さんですか!?」。

 山本翁が顔を覗き込むと、そこにあったのは以前島原署に在籍していた若い警官だった。「おう、○○君か。元気にしとるかね。先を急ぐから、行くぞ」。

 今のご時世ではとても考えられない話だが、「完璧に山本翁の "貫録勝ち" だった」と、とある消息通から聞いたことがある。

話は変わるが、会社の花壇にジャガランダの苗木二本を植えている。昨年、一番街の重松花屋で買った。一本七百円だった。初めのうちは「育つかな…」と心配していたが、最近は毎日の水やりですこぶる元気がいい。

 そのジャガランダの花を咲かせることは山本翁積年の夢だった。先日、息子さんの山本蔦五郎さんがNBCラジオの取材を受け話していた。「父がそれこそ何万本も失敗した後に、生き延びているわずかな苗木の子孫が、いま花を咲かせているんですよ」。

 「大事なことは全て手間がかかって難しいもの」。鍵山秀三郎さん(イエローハット創業者)の言葉「凡事徹底」を思い出した。