2009/11/25

小春日和」に想う…森繁さんは恥かきっ子!?

‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

この時節の穏やかな天候のことを「小春日和」と呼ぶらしいが、「小春」と言えば、坂田三吉の糟糠(そうこう)の妻の名前だ。

〈あばれ香車(やり)なら/どろんこ桂馬/みだれ角行(かく)なら/むかい飛車/坂田三吉勝負にゃ泣かぬ/可愛い小春のために泣く♪〉

映画『王将』の主人公は阪東妻三郎が演じ、小春の役は田中絹代だったというが、観たことがない。おぼろげながら記憶に残っているのは、長門裕之が主役を演じたテレビ劇だが、小春役は誰だったっけ…。

前述の歌詞はその時の主題歌『王将・夫婦駒』で、石原裕次郎が独特の甘い声で歌い上げた。蛇足だが、筆者のカラオケ・レパートリーの一つでもある。

まったく業界は異なるが、「破天荒」「一徹」…などといった同種のキャラクターで彩られるのが、上方落語界の鬼才!桂春団治だろう。

〈芸のためなら/女房も泣かす/それがどうした文句があるか/雨の横丁/法善寺/浪速しぐれか/寄席ばやし/今日も呼んでる/今日も呼んでる/ど阿呆春団治♪〉

ご存知!都はるみが岡千秋とデュエットで歌って大ヒットした『浪速恋しぐれ』の一節だが、この中に出てくる女房の名前は「お浜」である。

〈そばに私が/付いてなければ/何も出来ないこの人やから/泣きはしませんつらくとも/いつか中座の華となる/惚れた男の/惚れた男の/でっかい夢がある♪〉

いやー、泣かせるではないか!今は無き「夫唱婦随」の夫婦道。だいたい今の世の中は、やたら女性が強くなって、何とも亭主族は旗色が悪い。

こんなことを書けば、また世の奥様族に顰蹙(ひんしゅく)をくらいそうだが、「男が男らしくなくなり/女が女らしくなくなってきて」から歯車が狂っているような気がする。

「男女共同参画型社会」を提唱することに何の反論もない。ただ、この属性としての「らしさ」を失くしてしまえば、世の中はより殺伐としたものとなることは請け合いだ。

森繁久弥さんがまだ若かりし頃、元祖マルチタレントとして知られる徳川夢声さんと対談した折、「君は親父さんが幾つの時の子だ?」と訊かれた。「えーと、53歳。いわゆる〃恥かきっ子〃って奴です」。

「ほー、数少ない精子の中から選ばれたのだから優秀だよ!でもね、俺は親父が若い頃に出来た倅でね、君以上の倍率をかいくぐって来たんだよ」。

森繁さんもさるもので、「自分の方が優秀である」とする徳川さんの〃真意〃をすぐに読み取って、『隙間からスキマへ』という本の中で紹介している。

余談だが、その徳川さんが造ったとされる「彼氏」や「恐妻家」という言葉は、今の世でも十分に健在である。きっと、これからも…。