2009/11/11

名文家だった森繁さん…雰囲気は草野さんと瓜二つ

‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

森繁久弥さんが10日午前8時16分、老衰のため亡くなった。1913年(大正2年)5月4日生まれ。享年満96歳。何はともあれ、心よりご冥福をお祈りする。

島原との関係については、山本悌一郎さんが今年の本紙元旦号に2ページにわたって寄稿されているので、読者の方も良くお分かりだろう。

筆者も幼い頃より著名な〃芸能人〃であることは存じ上げていたが、プロの作家をも凌ぐ〃文章家〃でもあったことは、生前の宮崎康平先生から伺って、初めて知った。

昨夜、NHKの7時のニュースで訃報を知り、まず愕然とした。次いで、本棚から著作の1つを取り出し、改めて読み直してみた。素晴らしい。全編にわたって知恵とエスプリが〃ほどよく〃効いているのだ。

昭和59年に新潮社から出た(初版)、その本の題名は『人師は遭い難し』という。古希を迎えたのを機に、心に残る人との出会いを「これだけは書いておきたい」と芝居の幕間に筆を執られたものだそうだ。   

内容は多岐にわたっており、どの章立ても読み応え十分で、一々うなずかされてしまうのだが、紙幅の都合もあるので、絞って紹介する無礼をお許しいただきたい。以下、要約のみ。

辞書をひくと「伸るか反るか」は「成功するか失敗するか」の意味と書かれているが、元はサンスクリット語。「のるか=地獄、そるか=天国」から来ている。「猫も杓子も」も同様に「禰宜=神、釈子=仏」がその語源。【吉田茂のニヒリズムより】

(当時自殺する生徒が多かった母校の大阪・北野高校の講演に呼ばれて)「15歳の君1人をここまで育てるのに、推計200万人の色んな人々が何らかの力を寄せてくれている。その人たちにきちんとした感謝の挨拶もしないで勝手に命を断つことは、絶対に許されない」。【人の力 人の心より】

「人間それぞれゴムひもみたいなもので、太いのもあれば細いのもあり、張力も同じでない。引っ張ったり、ゆるめたりしてこそ長持ちするのだ」。【己にトボける術より】

このほかにも、ケネディ大統領夫人だったジャクリーンと、(再婚した)オナシス旦那との〃閨房の秘話〃を面白おかしく語った小話の紹介などもあり、森繁ワールドはまさに〃話の玉手箱〃である。

最後にいささか個人的な話をさせていただければ、我が生涯の師・草野壬二郎翁も、岳父も、森繁さんの後輩である(早稲田商学部)。また、元島原商工会議所の森本元成さんは旧制北野中学の後輩だ。

その草野翁が好んで使う言葉に「往事茫茫」という表現がある。その心中を忖度すれば、森繁さんと重なる部分も大きかろう。誤解を恐れずに言えば、その雰囲気は瓜二つである。