2013/04/25

今後は紙上で連載…方言には土地の歴史が

江川さんは島原市役所を15年前に定年退所後、同僚だった横田一彦さんらとともに、それまで以上に地域に根差して、伝統行事の普及・継承や後進の指導・育成に当たってきた。

筆者が取材のためご自宅(浦田2丁目)を訪ねた時も、夏の精霊船流しについて、早くも近所の人から相談を受けていたところだった。

聞けば、「白山っ子ひろば」(公民館)の運営に10年、「お散歩パトロール」に7年の歳月を費やしてきた、とのこと。

趣味の方も多彩なようで、自宅の庭には色とりどりの季節の花々に交じって、多くの盆栽の鉢植え。5月5日の「こどもの日」には地区の行事に積極的に参加してくれる「こひつじ保育園」の園児たちに手作りの竹トンボをプレゼントする予定だそうだ。

閑話休題―。「方言」(島原ことば)の話に戻る。江川さんの聞き取り調査によると、「島原弁」を使っているかどうか(方言体験)は、次のように「年代」によって大きく異なる。

「30歳くらいまで」→ほとんどなし。「40歳前後」→最近の方言を使う。「60歳前後」→何とか昔言葉を使うことが出来る。「80歳前後以上」→本格方言を十分に使いこなせる。

また、「島原弁」の特徴についても以下のように言及している。

助詞の「が」が「の」に訛り、さらに「ん」に変化していく。【用例】①「手が痛い」→「手の痛か」→「手ん痛か」②「蟻が集まる」→「蟻の集まる」→「蟻ん集まる」→「アン・・の集まる」

さらに!「方言」とばかり思っている言葉の中には、「広辞苑」にも載っているような、日本古来の古い言葉もあるそうだ。

【用例】①「おめく」→喚(わめ)く②「おーくぁん」(往還)→行き来する道、本通り③「なえる」→萎える④「くじる」→えぐる⑤「こぎる」→値切る⑥「もや」→一緒、もやい(舫い)・船と船をつなぐ

⑦「じゅっんなか」→どうしようもない(術無し)⑧「しゃちこばる」→鯱強ばる、緊張して身体を固く強ばらせる…など。

順序がいささか逆になってしまったが、江川さんは用例集の冒頭で、昭和の中頃までよく使われていた「島原弁」は「熊本弁」や「長崎弁」ともよく似ていて、アクセントの面では「鹿児島弁」にも近い、という説も紹介している。

その理由については、島原湊(島原港)が対岸の熊本県の百貫や天草、茂木(長崎県)と海路でつながり、交流が盛んであったことと何らかの関係があるのでは、との推測だ。

そうした歴史的観点・・・・・からしても、「島原弁」が我々「しまばらんもん」の〝無形の宝〟であることは間違いない。江川さんのお許しもいただいたので、島原新聞では今後折にふれて、その懐かしい用例を紹介することにする。
―おわり―