2013/03/27

カラスは旅をするか…30数年ぶりの高円寺駅

「百里千里を歩いても 歩くだけでは 能がないましてやくざな仁義沙汰 広い世間を狭くして どこに男の どこに男の 道がある♪」。

格段のカラオケ&演歌好きというわけではないが、社会人一年生の頃に大変お世話になった同僚の先輩(現在はゴルフ場社長)がよく車の中などで口ずさんでいたので、今でもその歌詞を覚えている。

唄っていたのは歌謡界の大御所、五木ひろしさん。確か、題名は「旅鴉」(たびがらす)だった。

出張2日目。東日本の夜明けは早く、もう6時前から空は明るい。前泊は新潟駅前のビジネスホテルだった。ごたぶんにもれず、そこでもカラスの群れが「カァー、カァー」と朝っぱらからやかましく啼いていたので、こんな書き出しとなってしまった。

日本では都会・田舎の区別なく、カラスの姿は全国どこでも見かける。海外ではどうなのか?とも思うが、もう久しく出かけていないので、今では皆目検討もつかない。

カラスにはカラスの事情があって、それぞれの「縄張り意識」に基づいて棲息していることだろうが、果たして全国各地を流離うようなカラス(旅鴉)がいるのだろうか…。そんな他愛もないことを考えながら、一昨日から「出張の旅」を続けている。

申し遅れたが、本日の宿は、東京・杉並の高円寺駅構内にあるJR系のビジネスホテルだ。高円寺と言えば、「阿波踊り」や「純情商店街」(ねじめ正一作)などでも知られるが、今から30数年前は筆者(学生時代)の最寄り駅の一つだった。

当時はもう一駅先の阿佐ヶ谷との〝中間〟に間借りしていて、日によって使い分けしてしていた。通学路のすぐ脇に新築の豪奢なマンション(まだ珍しかった)。そこに気障ったらしいフランス語の先生が住んでいた。

聞くところによれば、留学先から戻ってきたばかりで、奥様は生粋のパリジェンヌだとか。とにかく、赤塚不二夫さんの漫画に出てくるような「イヤミ」な先生だった。

ある日の授業で和訳を当てられて、シドロモドロニ何とかの「階段」と答えたら、「違う!違う!それでは作品の雰囲気が全く伝わらないでしょう。『階』(きざはし)と訳しなさい」と注意を受けた。

もう30年以上も前の出来事をしつこく覚えている自分の執着度(記憶力?)にも呆れてしまうが、あの先生は今頃どうされているのだろうか。

歌でも「歩くだけでは能がない」と言われているように、旅は単なる「物見遊山」で終わってはならない。そこにあって島原半島に欠けているものは一体何なのか?

残念ながら「出世の階」は大きく踏み外してしまったが、そうした「古里意識」だけは今後も粘り強く持ち続けていきたい。