2013/04/27

イボは切除したけど…目の上のタンコブだけは

「身体髪膚(しんたいはっぷ)これ父母に受くあえて毀傷(きしょう)せざるはこれ孝の始めなり」(出典・孝経)。

改まって言うまでもなく、体を傷つけないことは何よりの〝親孝行〟のはずである。なのになぜ、ヒトは意図的に〝メス〟を入れるのだろうか…?

常々そんな思いで暮らしているが、我が事となると、そうとばかりも言っておれない。右瞼の下に「イボ」ができて気になってしょうがなかったので、先日思い切って〝手術〟をしてもらった。

執刀医はご近所(上の町)の宮崎伸一郎先生(宮崎病院長)。診察室に入って症状を告げるなり、先生は一瞬深刻そうな表情を浮かべて見せ、お付きの看護師さんにこう指示を出した。

「え~っと、ペンチと錆びた包丁を用意して。それから病室は301号室」。もちろん〝冗談〟には決まっているが、「痛くはないだろうか?」と多少は気になった。

ベッドに横たわること数分間。錆びた包丁ならぬピンセットでの手術は無事に終了。仕上げに小指の爪ほどの大きさの絆創膏を貼られて、ハイおしまい!

問題はその先だ。そそくさと支払いを済ませて自宅に戻ったら、件の母が鼻歌をうたいながら洗濯物を畳んでいた。そして、絆創膏を見つけるなり一言。

「なぁ~んしたっね?」。「はい、イボが気になって仕方なかったので、さっき宮崎先生から取ってもらいました」。

〝術後〟の身としては、やさしい労いの言葉の一つも期待していたが、「フ~ン」と興味なさげに言うなり、その場を立ってトイレに行かれた。

その後、歩いて会社へ。当然、顔見知りの人にも会う。そしたら十人が十人こう聞いてくる。「どがんしたと~?」と。

こっちにとっては「我が意を得たり!」である。「いやぁ~、家庭に居ると色々ありましてですね~」とだけ答える。

すると、世間一般の人々は「ひょっとしたら何かしらまたヘマをやらかして、奥方筋からヤラれたのでは…」などと、勝手に想像をふくらませて下さる。

当方としては決してウソは言っていない。実際に家庭生活を送っていると、予想だに出来ないような色々な〝出来事〟が起きるのだから…。

夕食。黙って食べる。缶ビールを飲もうと思って席を立とうとすると、「傷口にアルコールは悪かろもん!」と、母娘見事なハーモニーで早速〝横やり〟が飛んでくる。

仕方なく、席に戻る。ひたすら無言でムシャムシャ。と、何かしら不吉な予感が走ったか、「まさかアンタ、私たちにお仕置きされたごて言いふらしとらんやろね?」とのご詮議。

イボはともかくも、「目の上のタンコブ」だけはどうにも切除のしようがない!?