2013/05/03

最近は活字づけ…苦境でも絶対諦めるな!!

このところ〝活字づけ〟の日々を送っている。特に理由はないのだが、本というものは、読み始めたらこれほど面白いものない。

始まりは村上春樹さんの新作―文芸春秋社刊『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。発売翌日にさっそく買い求め、一挙に読み上げた。一言で感想をいうなら、これまでの村上作品と違って「非常に読みやすかった」。

次いで手に取ったのが今年の「本屋大賞」(第10回)に輝いた百田尚樹(ひゃくた・なおき)さんの『海賊と呼ばれた男』(講談社)。上下700ページを超える文字通りの〝大作〟だが、それこそ寝る間も惜しんで〝耽読〟した。

ただし、この作品は「小説」と言うよりはむしろルポルタージュに近い。そのモデル(主人公)になっているのは、出光興産創業者の出光佐三(いでみつ・さぞう)さん。

作者の百田さん自身、「余り出光さんのことは知らなかった…」と述懐しているように、石油業界以外の人間にとっては〝遠い存在〟であったが、実際にこの本を読んでみると、その人物の凄さ(不撓不屈)、日本人としての矜持(きょうじ)―諸々が物の見事に描かれていることに感銘する。

筆者などは上巻を読んでいる途中から、「これはぜひ多くの人に読んで欲しい!」という〝熱〟にも似た思いに駆られて、都合3セットも買って、贈らせていただいたくらいだ。

そして最後の一冊は、先日の明け方に読み終えた、真保裕一(しんぽ・ゆういち)さんの『ローカル線で行こう!』という作品。たまたまだが、こちらも講談社から出ている。

1週間ほど前、新聞の書評欄を読んでいて「面白そうだな…」と思って出先の本屋で衝動買いしたものだが、これまた〝大当たり〟だった。

舞台は東北地方の小さな地方鉄道。人口過疎、高齢化等々の波をまともに受けて「赤字→廃線」の危機に晒された状況の中で、様々な人間ドラマが繰り広げられる。

真保さんは筆者好みの〝饒舌な喋り手〟で、会話の中にさりげなく忍び込ませている一言々々が気の利いたスパイスとして、それぞれの〝人物像〟がより鮮明に浮かび上がってくる。

見逃せないのは、地方鉄道が置かれた〝経営現況〟。例えは悪いが、我が「シマテツ」に置き換えて読み進めていけば、身近なサクセス・ストーリーとして希望が湧いてくる。

時あたかも、NHKの連ドラでは、瀕死に喘ぐ「キタテツ」(北三陸鉄道)が、主人公の高校生海女や個性豊かな地元住民の必死かつユーモラスな頑張りで、ようやく息を吹き返して来た段階。

いずれの作品にも共通しているのは「苦境にあっても絶対に諦めないこと」の大切さ。元気を取り戻せるような作品なら、活字でも映像でも悪くはない。