熊谷さんが日展審査員 - ユニクロ発展の陰に長尾さん -
芸術の秋である。島原市ともなじみの深いパリ在住の画家、長尾陶太さんが渋谷の東急文化村で個展を開いたのに続いて、島原市出身の熊谷有展さんが来月2日から始まる第38回日展(上野・東京都美術館)に出品する。
熊谷さんからの案内状によれば、一番若い審査員(40歳)とのこと。「審査員として何ができるかというプレッシャーの中で制作しました。例年通りなら、第 一室に展示されるかと思います」と期待と不安の入り混じった心境を述べている。同展は24日まで。初日が正午開会。最終日が午後三時閉会。通常は9時~17時。20日は休館。
ところで、長尾さんと言えば、在仏40年の大ベテランだが、意外な所でそのご尊名に巡り合った。本の中での話だ。
何年か前、宅島建設専務の宅島壽晴さん一家とともに久留米方面に出かけた折、たまたま買い求めたのが、ユニクロ創業者の柳井正さんが著した『一勝九敗』(新潮社)だった。
サブタイトルは「ユニクロも失敗ばかりだった?」。山口県の片田舎の洋服屋」の跡継ぎが、いかにして起業を図り、発展させていったか。〃実戦〃に基づいているだけに、なかなかに含蓄のある内容だ。
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《ぼくの父は、ある画家と親交が深かった。今から四十年以上前、その人が日本で描いた絵を何枚も買った。彼は一晩で絵の代金をすべて飲み代につかってしまい、また父に金を借りに来たという》
《彼はその後、すぐフランスに渡って絵を描き続ける。二十年後に、父が生涯に一度だけ海外に行ったことがあり、そのときパリの日本食レストランで食事をしていた。たまたまそこにその画家が来たのだ》
《「柳内さんじゃないですか!」と、お互いに驚くやら何やら、驚くべき偶然だ。父は、彼のアトリエに誘われ、そのときも絵を買って帰った。画家の名前を長尾陶太さんという》
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実は、長尾さんはこの後、同社に大きな貢献をすることになる。世界的にも有名な服飾デザイナー、三宅一生さんの事務所(国際部門)で働いていた多田裕さんを柳内社長に引き合わせるのである。
多田さんはデザイン研究室長としてアテネ五輪の公式ユニフォームを作るなど大活躍するわけだが、出会いの妙味について、柳井社長は「デザインを強化しなければいけない時期だったので、渡りに船の幸運というべきか、不思議なご縁だ」と述懐している。
あくなき美を追求する「芸術」と、効率主義が大原則の「企業経営」。一見、何の脈絡もないかのようだが、この一件に象徴されるように、世の中は実に〃不思議なご縁〃でつながっている。そうだと思いませんか、皆さん?
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