2006/10/27

南向きに生きるって? - アコウは別名「絞め殺しの木」 -

 25日付の朝日新聞に面白い記事が出ていた。社会面の囲み記事で「壁に芽あり」「鹿児島・アコウの木に困惑」というもの。

 同県内を走る国道10号沿いのブロック壁に、アコウの木が張り付いて幹や枝を伸ばし、トラック等の通行に支障をきたしている、との報道だ。

 記事によれば、アコウはクワ科の常緑樹。土がなくても、気根という根で空気中の水分を吸い、高さ20メートル、直径2メートルにも育つ、という。

 島原半島でアコウの木と言えば、何と言っても早崎(口之津町)の漁港近くにある大木だろう。確か、南有馬・菖無田の沿道にもあったはずだ。

 本紙新年号で北村西望さんの後を継いで表紙絵を描いてもらっている、加津佐生まれの画家、永田力さんが以前からその魅力を語っていたが、新生・南島原市の「市の木」に選ばれたのは慶賀の至りだ。

 ただ、アコウの木は良いとしても「南向きに生きよう!」というキャッチコピーはどう考えても解せない。言葉遊びとしては面白いのだが、どういう意図なのか、今度松島市長に会った時にでも聞いてみたい。

 再び朝日の記事に戻る。アコウの別名は「絞め殺しの木」。ヤシ木などに絡んで枯らしてしまうこともあるというから驚きだ。除去されてもすぐに新芽を出す「ど根性」ぶりは、まさに進取の気性に富む〃南目〃向きと言えよう。

 ところで、同市の「市の花」に選ばれたのは「ひまわり」。漢字で「向日葵」。お天道様の動きに従って花の向きを変えるというのが通説だったが、どうやら最近はそうでもないらしい。有明町の畑に確認に行ったら、あっちこっちバラバラに咲いていた。

 「ひまわり」の花弁は弁護士バッジにも採用されている。「弁護士は『公平公正』を旨とする法の番人。弱い人間を守る正義の味方だ」と言ったら、「弁護士、必ずしもそうとは限りません。裁判は『証拠のゲーム』ですから」と即座に否定されたことを思い出した。

 まあ、そうした論議はさておくとして、「ひたむきに生きる」という表現はどこから来たのだろうかと思って、広辞苑で調べてみたら「直向き」(熱中、一途)と書いてあった。

 何の脈絡もないが、幕末期、天領だった豊後の「日田」に開設された「咸宜園」(広瀬淡窓)という私塾には島原藩からも幾多の〃俊英〃が派遣され、勉学に励んでいた。とすれば、当時の島原藩のキャッチは「日田向きに生きよう!」だったのだろうか。

 今の大分県知事の広瀬勝貞さん(元通産事務次官)は淡窓の末裔だが、さる筋の紹介で、筆者も年一回勉強会(天領・日田を語る会)に参加できる機会をいただいている。今年は出席できなかったが、お元気だろうか。