2006/12/12

徳島・上勝町に学ぼう - おばあさんが年収数百万円 -

 大相撲島原場所の開催やら県外出張やらが続いて、しばらくご無沙汰してしまった。

 書く材料には事欠かないのだが、はて?何から書いたら良いのか迷ってしまうほどだ。まずは、徳島県上勝町(笠松和市町長)の話を少し - 。

 筆者は若い頃、徳島市に住んでいたので、今回の出張はある意味「センチメンタル・ジャーニー」でもあった。

 ほぼ十年ぶりの再会ではあったが、四国三郎こと「吉野川」の流れは滔々と変わらず、古里の山「眉山」(「びざん」と読む)も秀麗な山肌を保っていたので安心した。

 上勝町は、徳島市内から車で約一時間。勝浦川(一級河川)のほとりに広がる静かな山あいの村だ。人口約二千人。四国で最も小さな自治体だ、という。

 ところが、この小さな町がいま、全国的に注目を集めている。NHKをはじめ東京の民放キー局でも「特別番組」として放映されているので、ご記憶の方も多いと思う。

 平たく言うと、モミジやナンテン、ウラジロなどの、いわゆる「葉っぱビジネス」が大成功を収めているのである。

 最大の「牽引車」は元JA職員の横石知二さん(48)。現在は同町役場産業課の課長補佐を務めるかたわら、第三セクター「(株)いろどり」の副社長も兼ねている。

 視察では、収入役室長(参事)の星場眞人さんの講演を聞いた上で、同じく第三セクター企業の「月ヶ谷温泉」、JA集荷場などを分刻みで回ったが、何より驚いたのは、お年寄りのハツラツぶり。

 それもそのはずである。70代から90代の老婆約百人が、葉っぱをちぎって出荷するだけで、年収数百万円。箱詰めの葉っぱも軽いが、皆さんの足取りも軽いのである。

 これまでに約25億円を稼ぎ出し、医療費も他市町村の約半分。「福祉施設の充実より、産業振興を優先すべき。それが健全な街づくりの第一歩です」と、言い切る横石さん。

 今年11月中に訪れた町外の視察団は約四千人。さらに奥地に入った「棚田特区」の貸し出し料は、一反あたり年間で50万円。島原半島の20数倍という高値ながら、応募者が後を絶たない、という。

 筆者が徳島にいた頃の上勝町は、典型的な過疎地域だった。もともとはミカンの産地として有名だったが、昭和50年代の寒波で壊滅的な打撃を受け、無気力で自虐的な雰囲気が町全体を覆っていた。

 まさに「地獄状態」からの見事なまでの「復活劇」。同町では「葉っぱビジネス」ばかりでなく、「高度情報化サービス」「生活ゴミの徹底分別」…などにも積極的に取り組んでいる。

 とても一度では書き切れないので、稿を改めることにする。