植木等さん亡くなる - 「スーダラ節」は私の十八番 -
「すっときゃ、しかっとせん。いざという時ゃ、だらーっとしちょる」 - 。島原二中校長の林田行弘先生がヤル気のない生徒のことを、苦笑いを浮かべながら、そう形容する。
「スーダラ節」(青島幸男作詞、萩原哲晶作曲)や映画「無責任」シリーズで人気を博した植木等さんが27日、他界した。享年80歳。クレージーキャッツの時代から、大好きなタレントさんの一人だった。
以前、旅行会社に勤務していた頃、我が国における「旅の原点」と言われている「お伊勢参り」によく出かけた。その折、植木さんが三重県のお寺の生まれであることを、度々耳にしていた。
記憶では日蓮宗のお寺だと思っていたが、訃報記事によると、正しくは浄土真宗だった。人間の記憶とは実に曖昧なものだ。
実を言うと、「スーダラ節」は、「襟裳岬」と並ぶ私のカラオケの十八番(おはこ)である。ネクタイをバンダナ巻きにして客席を一巡すれば、ほとんどその場のスターである。
翌朝、しわくちゃのネクタイやシミの付いたワイシャツをしげしげと眺めながら、毎回のように反省している。「昨夜の行状は、バンダナではなく一文字変えてバカダナ」などと。
「ちょいと一杯のつもりで飲んで、いつの間にやら梯子酒。気がつきゃホームのベンチでゴロ寝。これじゃ身体にいいわけゃないさ。分かっちゃいるけどやめられない。あソレ、スイスイスーダララッタ、スラスラスイスイ」。
新聞各紙やテレビでは「高度成長期を反映しながらも云々…」と、もっともらしく解説されているが、二番、三番の歌詞には随分と社会風刺的な表現が盛り込まれていることを、ご存知だろうか。
「一目見た娘にたちまち惚れて、よせばいいのにすぐ手を出して。騙したつもりがチョイと騙された。俺がそんなにもてる訳ぁないさ。分かっているけどやめられない…」。
「狙った大穴見事に外れ、頭カッときて最終レース。気がつきゃ財布はスッカラカンのカーラカラ。馬で金儲けした奴ぁないさ。分かっちゃいるけどやめられない…」。
当時とは社会情勢が大きく異なったとはいえ、昨今流行の「不倫」や「ギャンブル」の問題点を鋭く指摘し、豪快に笑い飛ばしているではないか。
「スーダラ節」以外では、テレビドラマの主題歌ともなった「だまって俺について来い」がお気に入りだ。
「ゼニのない奴ぁ、オレんとこへ来い。オレもないけど心配すんな。見ろよ青い空、広い海。そのうち何とかなるだろおっ…」。
でも植木さん、私、確かに「ゼニ」はありませんけど、まだ諸般の事情で〃あの世〃には参れません。ナニ…?「お呼びでない。こりゃまた失礼しましたぁー」。
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