危機を救った「共同意識」 - 山口・見島のダイナミズム -
以前、本欄でも取り上げたことのある民俗学者、宮本常一の「生誕百年フォーラム」が27日午後1時から、福岡市天神のアクロス福岡で開かれる。
副題は、旅する巨人の「地育」「住育」「食育」メッセージ。主催は、宮本常一を語る会(長岡秀世代表世話人)。日本民家再生リサイクル協会九州沖縄地区委員会などが後援する。
参加費は2,000円(資料・会報代含む)。25日までに、ハガキ、FAX等で申し込むこと。
「自治体破たん」と言うと、最近では北海道の夕張市が引き合いに出されるが、作家の佐野眞一氏が著した『宮本常一が見た日本』(NHK出版)という本では、「孤島のダイナミズム」というタイトルで、山口県の見島が取り上げられている。
それによると、見島は萩市の北西約45キロに位置する日本海の孤島。周囲17.5キロ、面積7.8平方キロ。
宮本は山口大学の教授や学生らとともに、昭和35年から37年にかけて、計3回にわたって調査を実施。肩書きは〃無給〃の全国離島振興協議会の事務局長だった。
宮本らの調査によれば、この島は明治7年から明治16年にかけて〃共同負債〃のカタにとられ、一時期、島外の人手に渡っていた。
直接の原因は旱魃や風水害などの自然災害で、最初は島全体の田地を担保に、第百拾国立銀行から2万円を借りる(明治18年)が、その後も凶作が続いて返せない。
強硬に返済を迫る銀行に対して、島民は萩の大金持ちに2万6千円余で売り渡し、10年の年賦償還で買い戻すという計画を立てたが、それも失敗。
さらに凶作が続いたため、今度は津和野の鉱山主に3万5千円の借金を申し込み、とりあえず従前の借財を精算した。いわゆる〃負のスパイラル〃状態が続いていたわけだ。
この財政危機を救ったのが、山口県から派遣された厚東毅一(ことう・きいち)という書記官だった。厚東は明治32年、島民一人ひとりに「共同一致の精神による徹底倹約の必要性」を説いた。
その条文には「法事の酒」「盆踊り」「結婚と年始以外の絹布の着用」「住宅の新築」「旅行」を禁止するなど、生活全般にわたって「贅」を戒めた内容だった。
その甲斐あって「共同負債」が完済されたのは明治45年のこと。実に当初から27年の歳月が流れ、返済総額は12万7千円にものぼっていた。
ちなみに、現在の貨幣価値に換算すると、50数億円。同島の人口が約1千300人であるというから、単純に比較はできないものの、夕張市はまだマシな方かも知れない。
これを象徴的な「他山の石」とすれば、全国いずれの自治体とも「共同意識」が足りている、とは言えないだろう。
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宮本常一 生誕100年 福岡フォーラム
5月27日(日) 13:00~17:00
アクロス福岡 円形ホール
フォーラム概要
主催者あいさつ[ 代表世話人 長岡秀世 ]13:00~13:10
ドキュメンタリー鑑賞[ "学問と情熱"シリーズから ]13:13~14:00
基調講演[ "家郷の訓"と私 原ひろ子 氏 城西国際大学客員教授 お茶の水女子大学名誉教授 ]14:05~15:20
パネルディスカッション[ コーディネーター 長岡秀世 ]15:35~16:45
パネリスト
武野要子 氏 (福岡大学名誉教授)
鈴木勇次 氏 (長崎ウエスレヤン大学教授)
新山玄雄 氏(NPO周防大島郷土大学理事山口県周防大島町議会議長)
佐田尾信作 氏 (中国新聞記者)
藤井吉朗 氏 「畑と食卓を結ぶネットワーク」
照井善明 氏 (NPO日本民家再生リサイクル協会理事一級建築士)
作品展示
宮本純子[ 宮本常一名言至言書画作品 ]
瀬崎正人[ 離島里山虹彩クレヨン画作品 ]
鈴木幸雄[ 茅葺き民家油彩作品 ]
http://miyamoto-tsuneichi.blogspot.com/
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