2007/06/19

田原さんの講演を聴く - 地域メディアの可能性と責任 -

 過日、全国ケーブルテレビフェア(東京)を訪ねた。会場は以前、池袋のサンシャインだったものが、数年前から晴海のビッグサイトに移っている。

 これまでの新商品開発の視察から転じて、今年はじっくりと「地域情報化」そのものについて勉強するため、田原総一朗さんと、ばばこういちさんのシンポジウムに参加した。

 田原さんは『サンデープロジェクト』(テレビ朝日)等でおなじみの顔だが、ばばさんはCATV業界とは以前から繋がりの深い、辛口のコメンテーターとして知られている。

 2人は東京12チャンネル(現テレビ東京)→岩波映画→フリーランスと同じ道を歩いた〃気骨〃のジャーナリスト。年齢は田原さんが73歳、ばばさんが74歳。

 当日のタイトルは「地域メディアの可能性と責任」。まず、田原さんによる基調講演が行われたが、その中で最初に取り上げられたのが記憶に新しい『発掘!あるある大事典』(関西テレビ)の捏造事件。

 田原さんはテレビ番組の制作現場には、厳然として「差別構造」がはびこっている、と指摘。端的な事例として、下請け会社社長の報酬が、局担当者の5分の1でしかない〃現実〃を明らかにした。

 一方で、小渕内閣時代に起きた「長銀問題」を例に引き、メディアへの政治介入の〃実態〃を暴露。今年2月の部落解放同盟のオン・エア問題も絡めながら「テレビが段々と自己保身の道を辿り始めている」と警鐘を鳴らした。

 田原さんは言う。「その典型が地方の民放局だ」として、「いかに自主制作に金をかけないかだけに頭が向いている。これでは地方発の良い番組など出てくるはずがない」と切り捨てた。

 返す刀で「CATVの奮起」を促す田原さん。「明治以降、多くの発展途上国がそうであるように、中央集権の国家体制がもてはやされた。しかし、社会が成熟していくと、それでは対応できなくなる」。

 「中央集権に行き詰って、国にお金がなくなってきたから、国は地方分権を言い出している。そこが格差問題の根っこ。以前なら、ケインズ理論に従って、公共事業で景気回復を図ったところだろうが」-。

 さらに「中央集権体制の一番腐った官庁が、社会保険庁」としたうえで、IT時代の効用を説いた。「送り手と受け手の区別がない、ブログのような形態こそ双方向メディアだ」と。

 講演の結びはCATV業界へのエール。「地方局のサボリはCATVにとって最大のチャンス。中央に届くような番組を作るよう頑張っていただきたい」。

 続くシンポジウムでも辛らつな地方局批判が飛び出すが、少しだけ異を唱えさせていただきたい。「地方局も国の電波行政の方針転換によるデジタル化で苦しみながらも頑張っているんですよ」。

- つづく -