2007/06/26

資生堂・永嶋さんが講演 - 海外勤務支えた日本人の矜持 -

 「資生堂」と言えば、日本を代表する老舗の化粧品メーカーで、圧倒的なシェアを誇っている。例えて言うなら、広告業界の「電通」のような存在だ。

 その〃巨人〃との付き合いが60有余年にも及んでいる会社が島原市にある。中堀町(一番街商店街)の(株)ミネ。代表取締役はご存知、峯潔さんだ。

 その峯さんからお誘いを受け、23日午後に南風楼で開かれた、とある講演会に出席させて頂いた。会場を埋めた聴衆の99%は女性。些か息苦しい感じもしないではなかったが、中身の濃さは圧巻だった。

 実は、資生堂関係の講演会に呼ばれたのは、こんどが2回目。前回はもう10年以上にもなろうか、桐島洋子さん(作家)がやって来て、情熱溢れる恋愛体験や、「気」(気功)に関するお話を伺った。

 今回の講師は、福岡県出身で、女性として2人目の資生堂取締役にも選ばれた実績を併せ持つ永嶋久子さん(68)。現在は生徒数約500名の同社美容技術専門学校長を務めるかたわら、東京都中央区の教育委員などを歴任している。

 すでに何冊も著作のある永嶋さんだが、当日は3年前に西日本新聞社から出版した『肌にふれて 心にふれて』と同じ演目で熱弁をふるった。

 経歴を見ると、生まれはかつて筑豊炭鉱で栄えた嘉穂郡碓井町。地元の高校を卒業後、親戚が経営する福岡市内の料亭で働いたのち、資生堂の福岡販社に就職(昭和31)。

 6年後、第1回海外派遣美容部員に抜擢され香港へ。以来、27年間にわたって世界34カ国を駆け巡って現地法人の立ち上げなどに尽力する。

 著作にも取り上げられているが、香港、バンコク、ハワイ、ニューヨーク…と続いた海外勤務の中で永嶋さんが終始持ち続けたものは、日本人としての矜持(プライド)と、女性美への飽くなき探究心。

 極東の敗戦国、人種差別というハンディキャップにもめげず、派遣先の国情や国民性に理解を示す一方で、一心不乱に仕事に励んできた体験談にしばし聞き惚れた。感想を述べると、語学留学などという昨今の薄っぺらな「国際性」とはまったく異質なものだ。

 紙上で再現するには余りに多岐にわたる内容で無理があるので、興味を持たれる読者の方には、是非同書をお求めいただきたい。1冊1,600円(税込)。

 ところで、講演そのものより、聴いていて面白かったのは、主催者代表の峯社長のご挨拶。創業135年の歴史を誇る資生堂の成り立ちから、社是五訓まで、一つの企業が社会の荒波を超えて存続していく要諦を衝いたお話には、学ぶところ大であった。

 「綺麗なお姉さん」と遠目に憧れているガラスのカウンターの向こうで、生き残りをかけた壮絶なドラマが展開されていようとは…。今週は男女共同参画週間でもある。

肌にふれ心にふれて
肌にふれ心にふれて
posted with amazlet on 07.06.26
永嶋 久子 青木 忠興
西日本新聞社 (2004/06/30)
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