2007/07/05

腹立ちア・ラ・カルト - 怪しからんぞ『五足の靴』 -

 先日、藪から棒といった感じで、ある酒席で「訳の分からんコラム」と吐き捨てられた。別段、親しくもない人間から。

 乾杯前の素面での発言だっただけに、怒りを通り越して呆れた。席は一人置いて右隣。確たるご批判なら耳も傾けようと思ったが、そんな様子は窺えない。ご本人はいたってゴキゲンの様子だった。

 まあ〃軽口〃の類いだろうが、こちらはたちまち鼻白んだ。ゴルフで言うなら、ショットの直前に、〃チャチ〃を入れられOBを叩いたような気分だ。

 しばらくは我慢して居たが、腹の虫が収まらなかったので、二次会は御免こうむった。翌朝、家人にその話をしたら「相手にせんで良かさ」と一言。

 余りに卑近な事例で申し訳ないが、言葉はそれ程までに人を傷つけるものだと痛感した。一方、場合によっては、励ますものでもある。ここはぐっと堪えて「他山の石」としよう。

 と、この原稿を書いていたら、旧知の人から「こともあろうに、しかるべき地位にある人間(政治家)から、ウチの社員がバカ呼ばわりされた」と、憤懣やるかたない口調で電話がかかってきた。

 「私は選挙でも応援した。私個人に向けられた批判なら構わないが、可愛い社員のことをよくも…。最も言葉を大切にしなければならない職種の人間にあるまじき暴言だ!!」と、息つく間もないくらいだ。

 その上で振られたのが、先日の久間防衛大臣による〃舌禍事件〃。「歴史認識の問題以前に、被爆関係者の心情を想えば、あってはならない発言だった」と残念がった。

 ところで、少し以前の話だが、さる筋から「島原人よ怒れ!!」とのメールを頂戴した。その矛先は岩波文庫から出ている『五足の靴』という作品に対して、であった。

 同作品は明治40年夏に書かれた匿名の紀行文で、新聞にも26回にわたって連載された、という。作者は「五人づれ」とされているが、解説には雑誌『明星』に集う若き詩人たち、と何やら思わせぶり。

 随分と以前から耳にしていた〃問題の作品〃でもあったが、実際に買い求めて読んでみて、「これはひどすぎる」と思った。

 5人づれとは北原白秋、平野萬里、太田正雄(木下杢太郎)、吉井勇、そして与謝野寛(鉄幹)。いずれも日本文学史上に名を遺した人物だ。

 福岡、唐津、佐世保、天草などを経て島原入りした五人だが、その記述が余りにもお粗末だ。事実無視。とても文学者の表現とは思えない。メール発信者よりの「怒れ!!』とのご指摘もむべなるかな、である。

 余りにおぞましいので引用を避けるが、あの叙情派の小椋佳が師とも仰ぐ白秋先生がこの五人組に含まれていようとは…。しかも岩波書店から…。

 こりゃ黙っちゃおられんばない。抗議ばしましょで!!

五足の靴
五足の靴
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五人づれ
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