「すだち」の思い出 - 中元は〃人間贖罪の日〃なのだ -
「御中元」の季節である。我が家でも、日頃ご無沙汰している方々などから色々と頂戴しているようだ。有り難い話だ。
個人的には徳島特産の「すだち」を贈ることにしている。徳島の人々はこの〃柑橘〃にとても誇りを持っており、旅する時にも必ず持参する。
最初にその〃風味〃に出合ったのは、鳴門のドライブインだった。見よう見まねで冷奴にかけたら、これが抜群の美味!!
以来、病みつきになったが、コーヒーにまでその汁を垂らしているのを見て「そりゃあんまりでしょう…」と〃苦笑い〃したことを覚えている。
『今日は何の日?』(学研)によると、旧暦7月15日は「中元」だという。ちなみに正月15日が「上元」、10月15日が「下元」と呼ぶのだそうだ。
もともとは中国に伝わる「道家」の説によるもので、特に中元は「人間贖罪(しょくざい)の日」として、神に供物をして盛大に祝った、とされている。
これが日本に伝わり、仏教の「盂蘭盆」(13日 - 16日)の習慣と結合して、現在の「御中元」の風習が生まれたものらしい。
面白いのは、関東と関西で時期に差がある点。関東では7月1日から15日くらいまで。関西だと、7月下旬から8月15日頃まで、と若干遅れ気味だ。
「すだち」の話に戻る。毎年発送をお願いしているのは「K青果」という市場の仲買人さんだ。
拙者は先代の頃から可愛がってもらった。営業に行くと、酒の臭いをプンプンさせながら「えーい、ジャマジャマ、どけ。言うこと聞かんかったら、ぶち殺すぞ、この野郎!!」。
前掛け姿の赤ら顔はどことなくユーモラスでもあったが、大日本帝国陸軍仕込みの迫力は相当なものだった。体格も良かった。
ある時、一緒にオーストラリアに旅行することになった。出発前、先輩から渡された部屋割リストを見ると、こともあろうに拙者と同室。
初めて触れる夏冬逆の南半球の大地は圧巻で、車窓から眺める広々とした海岸では、トップレスのブロンド美人達が気持ちよさそうに寝そべっていた。
ふと、傍らに座っている先代の方に目をやると、市場では見かけたことがないような温和な表情を浮かべ、鼻水をすすっていた。今思うと、あれも〃旅情〃の一つだったのだろうか。
ホテルに入ると、気ぜわしく部屋回りをする拙者を捕まえて「おい、そんなに気を使うな。人生は要領をもって本分とすべし、だ」と労わってくれた。
さらに一仕事終え、シャワーを浴びて休もうとしたら、テーブルの上には持参した日本酒とすだちが「ごくろう様」のメモ書きとともに置かれていた。
お礼を言おうと思ったが、「じゃかましい」と怒られるに決まっているので、その晩は黙って寝た。
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