2007/07/30

作家・小田実さん死去 - 諫早の〃熱意〃が島原を凌駕 -

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」 - 。西岡武夫さんが以前、何かの選挙で落選した時に語った言葉だ。

 その西岡さん(民主・比例)は衆議院から鞍替えし、参議院で二期目の当選。一方、小嶺忠敏さん(自民・長崎区)はあと一歩の所で及ばなかった。

 勝敗の結果分析は評論家や大手各紙に任せるとして、個人的には「島原半島3市VS諫早市」の構図で捉えていた。その視点で見ると、小嶺候補が200票余り上回っている。

 極めて〃偏狭〃な見方なので、この辺で打ち止めにするが、要するに「諫早市から是が非でも国会議員を!!」という〃熱意〃が、島原半島のそれを上回っていた、ということだ。

 作家の小田実(おだ・まこと)さんが30日、亡くなった。75歳。「ベトナムに平和を!市民連合」(ベ平連)の活動家として知られるが、そうした政治的側面より『何でも見てやろう』(講談社文庫)の著者として、より〃親しみ〃を感じていた。

 初版(河出書房新社)は61年(昭和36)というから、拙者が小学校に入る前に書かれているわけだが、読んだのは昭和40年代後半の高校時代。

 学校の国語教師が薦めるどんな古典小説や評論なんかより、スリリングで遥かに面白かった。夏の暑い盛り、汗をポタポタ流しながら貪り読んだことを覚えている。

 32年(昭和7)生まれと言うから、石原慎太郎東京都知事と同い年だが、ベ平連仲間の開高健さんらとともに〃行動する作家〃のイメージが強い。

 友人で哲学者の鶴見俊輔さんは小田さんとの出会いの印象を、次のよう語っている(31日付・朝日新聞『天声人語』)。

 「たまたま拾ったビンから煙がもくもく出て、アラジンのランプみたいに巨人が現れた」 - 。

 残念ながら、お話を聴く機会には恵まれなかったが、高校の後輩Tが「代々木ゼミナール」(予備校)に通っていて、小田さんはそこで英語講師を務めていた。そのTが「小田実はすごい!!」を盛んに連発していたことを覚えている。

 小田流の英語の勉強方法は至極単純だ。アレコレ考えず、悩まず、英語そのものを丸呑みして、覚え込んでしまうこと。

 「国際化」に関するくだりも面白い。「ひと口に『国際化』と言うが、これを訳すとなると、簡単なようで、なかなか難しい」 - 。とても予備校の授業とは思えない、哲学的な問い掛けだと、今でも思う。

 さて「正解」が何だったのか、今ではカケラも覚えていないが、年をとるにつけ、英語を操るだけの〃スピーカー人間〃にだけは成りたくない、と考えている今日この頃である。

 もっとも、からっきし喋れない、典型的な昔の英文科生であるが…。

何でも見てやろう (講談社文庫 お 3-5)
小田 実
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