2007/09/10

『あかね空』に泣く - 人生色々、「しせい」も色々… -

 週末、かねてから読みさしていた山本一力の直木賞受賞作『あかね空』(文春文庫)を一気に読み上げた。感動に次ぐ感動…。仕舞にはオイオイ泣いた。

 ふだん時代物を読むことは滅多にないが、自伝的エッセイ『家族力』(同)が余りに面白く記憶に残っていたので、引き込まれるようにページを繰った。

 一言でいうと、この人の半生は「破天荒」。両親の離婚等の家庭的な事情もあって高知県から東京に引っ越し、都立の工業高校に通う。

 卒業後は旅行会社に勤務するが、年齢、学歴等を詐称して二度の結婚と離婚。破綻の原因はいずれも女性問題。ようやく三度目にして落ち着く。

 仕事も落ち着かず、旅行会社の次は広告代理店、雑誌編集、販促企画…などと次々と職を変えた挙句、事業に失敗。三度目の妻の実家に莫大な債務を負わせる破目に。

 普通ならこの辺りで「ジ・エンド」となるところだろうが、「よーし、ベストセラー作家になって一挙に借金を返してやる!!」と一念発起。

 事実は小説より奇なり―。まさしく、その思いが「正夢」となった。「あなたなら絶対にできる」と、ヤクザな旦那の背中を押した夫人が偉い!!

 『あかね空』の主人公は京都から江戸・深川に単身出てきた豆腐屋。長屋の隣に住む娘とすぐに恋仲となり祝言を挙げ、順調な船出を遂げるが、人生そう思い通りにはならない。

 最初は睦まじかった夫婦仲も、長男が産まれたあたりから「微妙な狂い」を見せ始める。そこに絡む阿漕(あこぎ)な商売敵や下町の人情。

 解説本ではないのでここらで止めるが、心理描写の巧さもさることながら当時の江戸庶民の生活の様子がビジュアルに浮かび上がってくるから不思議だ。

 作家の平岩弓枝さんはこの作品を「『市井』物の傑作」と激賞しているが、今日10日から島原市議会では「『市政』一般質問」が始まる。

 「しせい」をパソコンで叩くと、色んな文字が出てくる。単純に列挙しても「姿勢」「市制」「市勢」「施政」「至誠」「四声」「詩聖」…といとまがない。

 「市井」とは人家が集まる所。すなわち「巷」(ちまた)から転じて「庶民」の意味があるそうだ。老婆心ながら、「市政」運営にはくれぐれもその視座をお忘れなく。

 併せて、質す側の議員先生の「姿勢」にも注目したい。やたら斜(はす)に構えたり、タメグチだらけの質問は、聞いていて気持ちが良いものではない。

 大切なのはその言動に「至誠」があるか否か。『あかね空』に登場する正義の親分衆はいずれも「姿勢」が良くて「至誠」を貫く人物として描かれている。

 「さあ、今日からはもっと胸を張って『姿勢』を良くして - 」と、メタボ男も思うのであります。

あかね空 (文春文庫)
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山本 一力
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