2008/01/22

オロロンバイの語源 - 熊本の藤本さんが解明!! -

先週末、どうしても外せない私用(半分は仕事)が重なって本欄の執筆を休んでいる間に、心暖まるお便りを2通いただいた。いずれも「オロロンバイ」の語源に関する話だ。

1つは口之津に住む高校時代の同級生S君(医師)からのメール。同君は「オロロンバイ」の話題を取り上げた拙文に目を通してくれたようで、「『オロロン』はアルメニア語では『子守唄』ではなく『ゆりかご』である」と教えてくれた。

出典は、NHK元会長の坂本朝一さんが著した『放送よもやま話』(文春文庫)を取り上げたブログの一節だという。S君、貴重な情報ありがとう。

もう1つの情報がすごかった。恐らく、この問題(?)に関する答えは、これではじき出されたのではないか、と思ってワクワクしている。

大判の封筒に入った書簡を下さったのは、深江町在住の女性Tさん。上質の和紙の便箋に書かれた達筆の手紙とともに同封されていたのは、Tさん宛に投函された私信の写し。

そこに答えがあった。差出人はTさんの弟で、熊本市在住の藤本憲信(けんしん)さん(73)。以下、その内容を抜粋しながら、論を進めることにする。

〈子守唄の共通語はネンネン コロリヨ オコロリヨですね。このオコロリヨに、私は注目しました。これを九州で取り入れると、オコロリバイ、となるはずです〉

〈オコロリバイの『リ』は『ン』に変わり易いのです。ブラリブラリ→ブランブラン、ソロリソロリ→ソロンソロン…などといった具合に。そうして、オコロリバイ→オコロンバイとなります〉

〈さらにオコロンバイの『コ』は、『ロ』に引かれて、オロロンバイに変化します。つまり、オロロンバイの語源は(分かりにくいのですが)、実はオコロリヨだったのです〉

〈『バイ』は共通語の『~よ』に当たります。例えば、『行くバイ』の意味が『行くよ』といった具合に。私の説は、絶対に間違いないものと確信します!!〉

実は、藤本さんは知る人ぞ知る「方言研究」の大家で、三省堂から『全国方言小辞典』(本年末に出版予定)の執筆依頼が寄せられるほどだ。

ちなみに、その著作は熊本大学、九州大学の論文集は言うに及ばず、アメリカのハーバード大学図書館にも収められているというからスゴイ!!

なお、昨年は「第29回熊本県民文芸賞」の「評論・ノンフィクション」の部門で一席に輝いている。作品名は、石牟礼道子『おえん遊行』論 - 精霊の飛翔と神々の座 - 。

藤本さんは、「コ」から「ロ」へ変化する現象を、「同化作用」(アッシミレーション)という専門用語を使って分析。「思いつきでなく、音声変化の上から合理的に説明し得たもの」と解説して下さった。以上。