2008/04/22

モノじゃないヒトだ - 心を亡くさぬようにせねば!! -

先週は、出ずっぱりで慌しい毎日だった。一転今週は、腰を落ち着けて取り組まなければならない仕事が山積している。

こうしてコラムを書かせていただいているお蔭で、時々、見知らぬ方からお声をかけられる。恥ずかしくもあり、励みにもなる。だから、止められない。

率直に言って、ネタ不足の時など、〃多忙〃を理由にサボりたくなる。でも、サボってしまうと、何となく後味が悪い。

太平洋戦争終結時の「玉音放送」の草稿を書いたとされる陽明学者の安岡正篤さんによれば、「忙しい」と口にしてはならない、という。なぜなら、「忙」の字の意味は「心を亡くす」からだそうだ。

とは言っても、小生のような〃凡人〃はついつい「忙しかけん、そいは後回しにしてくれ」などと、しょっちゅう口走っている。これでは一生〃凡人〃のままで終わってしまう。

ただ、開き直りではないが、個人的には「それでもよい!!」と思っている。〃凡人〃は〃凡人〃らしく一生を送っても構わないではないか。それが〃庶民〃というものだ。

旅行会社勤務時代(徳島県)のお客さんに、「凡智」という名前のブティックが、同県庁前の通りにあった。多分、今もあるだろう。

飛び込みで契約を取ってきた所だが、そこの社長ご夫妻から大変に可愛がってもらった。息子さんは東大を出て住友商事に就職していたということだったので、もう随分と出世もされていることだろう。

そこの奥さんがいつもこう言って励ましてくれた。「あんな、人間はみんなボチボチや。今の境遇に腐らんと、しっかり頑張らんとあかんで」。

小生にとっては最上級の顧客であった。何より客筋が良かった。今で言う〃セレブ〃の集まりであった。次から次へと新しいお客さんを紹介してくれたり、何より旅行そのものが超ゴージャスであった。

小生もその期待に応えて頑張った。一冬で、百万円以上もするフェンディの毛皮を何着も売ってあげたこともある。

\当然、社長ご夫妻は大喜びしてくれたが、釘を刺すのも忘れなかった。「えーか、お客さんは毛皮というモノを買うてくれはったけど、同時にあんたを買うてくれはったんや。大事にしーや」。

正直言って、あの頃の勢いも情熱も、今は持ち合わせていない。ただ、どんなに時代や環境が変わろうとも、失くしてはならないものがある。

口癖だろうか、週初めの早朝会議で、ある社員が「一応…」という言葉を連発したので、堪らず注意した。それは取りも直さず、自らに向けた注意の喚起でもある。

何でも「一応…」で済ませてはいないだろうか?「多忙」にかまけて、心を亡くさぬようにせねば!!