2008/06/22

ストレスは人生の雨…信頼できる〃人〃いますか?

‐(株)ケーブルテレビジョン島原専務清水眞守‐

梅雨真っ盛りである。今朝も防災無線で「大雨洪水警報が発表された」と報じていた。国交省雲仙復興事務所提供の「お天気チャンネル」を見ても、まだ当分は止みそうにない。

ふと、机の脇に以前から置いていた、ある企業のPR誌の見出しが目に留まった。そこにはこう記されていた。「ストレスは人生の雨・元気になる〃傘〃を持とう」と。

ある企業とは、長距離電話のNTTコミュニケーションズ。筆者は、耳慣れない言葉だが、「健康社会学者」の河合薫さんという妙齢の女性だ。

河合さんはANA国際線勤務の後、平成6年に第1回気象予報士試験に合格した〃変り種〃。早速、その資格を活かしてテレ朝系の「ニュースステーション」のお天気キャスターとして活躍していた。

16年には、東大大学院医学部系研究修士課程に進み「健康社会学」を修了。昨年、同博士課程を経て、現在は「保健学」のドクターでもある。

すでにキャスター時代から、天気が人間の体や心に及ぼす影響についての「企画コーナー」を設けるなど、今日の〃下地〃はあった、という。その成果は14年に『体調予報』という一冊の本にまとめられた。

研究の基礎になっているのは、イスラエルの社会学者アーロン・アントノフスキーが唱えた「健康生成論」。以前から医学の分野にあった「疾病生成論」とは少し異なる切り口で成り立っている。

専門的なことはさて置くとして、その理論の根っこの部分は「人間には本来ストレスを退治するパワーが備わっている」という考え方で構成されている。一言でいうと「ストレス対処能力」というものだ。

河合さんは、人生に付きものの「ストレス」という感覚を「雨」という言葉で表し、それからの被害を防ぐには、程度に応じて大小の「傘」や「レインコート」などを準備しておく必要がある、と説く。

現代日本は、年間3万以上もの人が自ら命を絶つ過度の「ストレス」社会である。河合理論によれば、それを思い止まらせるには、周囲に「信頼できる」、或いは「悩みを相談できる」人間がいるかどうか、にかかっている。

ここまで読み進めていくうちに、何日か前の長崎新聞に取り上げられていた、長崎市出身の映画監督、橋口亮輔氏の記事が思い出された。

同氏は6年前に『ハッシュー』という映画を撮り終えた後、うつ病にかかって「毎日死ぬことばかり考えていた」そうだが、あるきっかけから「生き延びる道」を選ぶ。

作品のタイトルは『ぐるりのこと。』主演の法廷画家役にリリー・フランキー。出版社勤務の妻役は木村多江。『ぐるり』とは、ひょっとして方言でいう「周囲」のことだろうか。県内では、21日からユナイティッド・シネマで公開中。