2008/07/16

原油価格高騰の問題…結局は〃弱者〃にシワ寄せ

‐(株)ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

「自分が作ったモノの値段を自分で決められんなんて、根本からおかしいと思わんかね?」。高田知事当時、長崎県総務部長だった小田浩爾さんから、冒頭のような問いかけをされたのは今からもう15年以上も前のこと。

いまだにその〃問題提起〃が脳裏から離れない。小田さんのその言葉は〃市場原理〃で買い叩かれる地元産品流通ルートに対する〃怒りの声〃であった。言うなれば〃義憤〃である。

ところで、原油高騰の煽りで、今や日本経済は大混乱の様相を呈している。15日には、全国の漁業関係者が一斉に操業を取り止めた。出漁すればするほど赤字になるのだから、何とも深刻な事態である。

もともと経済畑とはほど遠い世界を歩いてきたので「仕組み」そのものが分からない。が、ここまでくると、さすがに座視できない心境になってきた。

本屋に行った。早速、目に飛び込んできたのは「栄太郎飴」のような色合いをした新刊本だった。『緊急改定・知られていない原油価格高騰の謎』(技術評論社)。著者は芥田知至氏。

眠気をこらえつつ頁をめくってみたが、いま一つ〃問題の核心〃が掴めない。「セブン・シスターズ」「OPEC」…。我慢して読み進めていくうちに、朧気ながら輪郭のようなものが浮かび上がってきた。

それは、現在の原油価格が取りも直さず「先物市場」(投機資金)で決まっていること。これだと、我々庶民がいくら騒いでみたとしても、結局はその決定に従うしかないのか…。

それより、むしろ気になったのは「原油依存度」という初めて目にする言葉。つまりは、原油価格がいくら高くなろうとも、仕組みによっては影響度を弱めることができるのだ、と。

為替の変動とも密接に係わってくる問題だが、端的に言うと、「先進国」ほど割を食わないシステムが出来上がっている。誤解を恐れず言うなら、「先進国」を「大企業」に置き換えるとより分かりやすい。

同書の事例で言うと、遠洋マグロ漁船の場合、一隻あたりの燃料費は年間で約一千万円増。ところが、海外からの輸入品との競合で価格の転換ができない。

農業も同様で、トマト促成栽培で試算すれば、重油燃料の高騰で約二割もの所得減につながる、と言われている。このほかガソリンスタンド、運輸業などへの影響もつとに大きい。

ここまで読み進めてきて改めて分かったことは、要するに「原油高」の影響は、島原半島の主要産業を軒並み直撃している、ということだ。

その点、大手の企業が経営している電気やガスなどはまだ救われている。原油や液化天然ガス(LNG)の輸入価格に基づいて、それぞれ調整する仕組みが出来上がっているからだ。

小田さんが15年以上も前に指摘した〃怪しからん事態〃が何ら解決していないことが良く判った。