取り戻そう〃昔の輝き〃…湯布院はヨソモンの温泉街
‐(株)ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐
JR九州の車内情報誌『プリーズ』の8月号に、北村西望さんと、雲仙温泉の和風旅館「東園」が、特集記事で紹介されている。
西望さんを取り上げているのは「九州ものしり学」というコーナー。書き手は「船木麻由」というから、たぶん女性のライターだろう。
在りし日の西望さんがこよなく愛したという、長崎市の料亭「青柳」とのほのぼのとした人間関係を皮切りに、平和祈念像制作当時のエピソード等をさりげなく織り込んでいる。
「東園」の方は〈また訪れたくなる九州の温泉宿〉とのタイトルで、おしどりの池を臨む大浴場の写真を中心に、同園ご自慢の「おもてなし」の極意を達意な文章で綴っている。
ところで、「雲仙」と言えば、日本で最初に国立公園の指定を受けた(昭和9年)ことで知られるが、「全盛期」を知る者にとっては、現状はいささか寂しい限りだろう。
仕事の関係で、旧小浜町と姉妹提携を結んでいた鹿児島・霧島温泉郷と、大分・湯布院温泉を相次いで訪ねたが、今やその差は「歴然」としているような気がする。
霧島の緑はどこまでも深く、街全体に漂う雰囲気に、どことなく余裕のオーラが滲み出ていた。また、国際音楽祭などのイベントの仕掛けも、遥かに雲仙の上を行く感じだった。
一方の湯布院。あいにく、日暮れ以降に宿に着き、翌朝早くに旅立たねばならない慌しい日程だったが、今や九州観光の横綱たる「風格」を漂わせていた。
宿から駅までの送りの途中、タクシーの運転手さんが語ってくれた言葉が、しばらく経った今でも耳にこびりついて離れない - 。
「お客さん、この辺りは昔、レンコン畑というか、どうしようもない湿地帯だったんですよ。それがどうですか、この川ができて土壌が変わり、今ではこの賑わいぶりです」
最初のうちは聞き流していたが、次に出て来た言葉にハッとした - 。
「こいつらみんなヨソモンですよ。昔からの湯布院の人間はごくごく数えるほど。騒がれば騒がれるほど、土地の人間としては複雑な心境です」
そうした愚痴めいた話を聞きながら、普賢岳が噴火して間もない頃の雲仙でのシンポジウムのやりとりを思い出していた。
「湯布院をどう思うか?」との質問に対し、「格が違うよ!!」と切り捨てた当時の幹部。何かしら危うい響きを嗅ぎ取ったが、20年近く経った今の状況は、まったく「逆転」していると言っても過言ではない。
だが、時代は必ず変わる。雲仙(島原半島)なりの良さを〃追究〃していけば、かつての輝きはきっと取り戻せる!!そう信じて疑わないのは、関係者ばかりではないはず。
まずは地元。西望さんの言葉を借りれば「たゆまざる歩みおそろし蝸牛」である。
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