大切なのは「志」だ!!…歴史は観る角度で異なる
‐(株)ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐
読書の秋。五百ページ近い、佐野眞一さん著の『甘粕正彦 乱心の曠野』(新潮社)をついに読み終えた。ちょっと手にしただけでも、ズシリとした〃重み〃を感じる大作だけに、ある種〃達成感〃にひたっている。
感想を述べれば、佐野さんにしても、鎌田慧さんにしても、どうしてこうも筆が立つのだろうか、とホトホト感心してしまう。お二人とも宮崎康平さんと同じ早稲田文学部の出身だ。
実を言うと、鎌田さんから以前に送って頂いていた『大杉栄 自由への疾走』(岩波書店)という作品をまだ読了していない。この際、現在のルポルタージュ界の両巨頭の〃歴史観〃の違いを確認するチャンスでもある。今宵早速!!
佐野さんの作品に、千々石出身の「橘中佐」の名前が出てくることは以前本欄でも紹介したが、世間一般では「大杉殺しの首謀者」と目されていた主人公・甘粕大尉(後に満映理事長)の長男が昭和45年当時、長崎に勤務していたこと、またその母(甘粕夫人)がこの地で終焉を迎えた「史実」そのものが大変な驚きだった。
正直なところ、大東亜戦争を挟む「昭和史」そのものに、これまでさほどの関心を抱いたことはない。甘粕大尉のことも、大島渚監督の映画『戦場のメリークリスマス』の中で坂本龍一が〃暗め〃に演じたことくらいしか印象がなかった。
最近になって特に感じることは「歴史は観る角度によって大きく異なる」ということ。もっと平たく言えば、「正義」にもなり得るし、「悪」にもなり得る。至極単純な結論だ。
ただ、ここで忘れてならないのは「志」の問題であろう。手法はどうであれ、「(社会全般&将来に対して)良かれ」と思って取り組むことと、「我が身可愛さに固執すること」とは、まったくの別物である。
後の歴史はその「真贋」を必ず検証する。否、それを怠るような社会は、もうその時点ですでに「死に体」であって、「存在価値」などあろうはずがない。そうした「視点」で世の中の動きも眺めていけば、また違った「感慨」も生まれてこよう、というものだ。
昨夜、日テレの放送で、全国の高校生を対象とした「クイズ番組」をやっていた。勝ち残っていたのは、誰もがその存在を知っている超有名校ぞろい。凡人の頭脳ではとても及びもつかないような難問の続出だったが、それは、それは見事な「正答率」であった。
その「得意満面」の表情を見るにつけ、ひょっとして、何かしら「危ういもの」を感じ取った方も多かったのではなかろうか…。確かに、国力を維持・発展させていく上で「明晰な頭脳」は必要不可欠なもの。
ただし、それだけでは「不十分」である。お笑い系のタレント連中が正解の度ごとに「お追従」を送る構図に、「旧満州国の幻影を垣間見てしまった」というのはチト言い過ぎか。
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