2008/11/08

地酒は空気とともに…「栄枯盛衰」は世の習い

‐(株)ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

拙稿を書いているのは諫早から博多へ向かう列車の中だ。こう言うと、いかにも〃流行作家〃を気取っているようで面映いが、何のことはない、今朝ほど寝坊してしまったツケを必死で払っているだけだ。

島原駅を出る際に買い求めた週刊文春では、北京五輪・柔道百キロ超級の金メダリスト、石井慧の「ビッグマウス」の数々を取り上げているが、別段驚くに値しない。ボクシングの亀田何某と同じ「大阪人」に他ならないからだ。

先月末から仕事で色んな所に出かけているが、やはり「土地柄」(気質)というものは確実に存在している、と思う。雪国の人は粘り強く、南九州の人間はあけすけで豪快だ。

酒の飲み方にもそれは現れる。東北&北陸人は辛口の日本酒の杯をチビチビと口に運ぶ。一方、南の薩摩隼人はグラス並々に焼酎を注ぎ込んではグイッと干し上げる。

どちらが酒に強いかは個々人の資質なので判断のしようもないが、いずれの場合も「地酒」に対する熱い思いが伝わってきて、好感が持てる。宮崎康平風に言えば、酒という液体とともに、その土地々々の空気や文化などを体内に流し込んでいるのだ。

今日の訪問先は岡山県倉敷市である。これまでも幾度か訪れたことがある「蔵の街」だが、正直な印象を言えば「退屈」であった。ただ、大原美術館創始者の大原孫三郎氏の「偉大さ」については各種の経済誌等で読んだことがあり、時間が取れるようなら行ってみたい、と思う。

そうそう、岡山で思い出した。まだ子供が小さかった頃、次男が少林寺空手道の全国大会に出場することになって、家族全員そろって出かけたことがある。恐らく、その際に泊まったホテルが、お粗末さにかけてはこれまでの「最高記録」であろう。

カタカナ文字の名前は立派だったが、内情は正反対だった。ホテルとは名ばかりで、テレビにはまだ「4本脚」の台座が付いていた。古びてカビが生えたようなロビーには、どういう訳か、かつて大臣を務めた某経済学者の著作がホコリを被って並べてあった。

恐らく、その学者先生が元気な頃には「殷賑(いんしん)を極めた」施設だったはずだが、凋落ぶりは目も覆うばかりだった。まあ、政界や経済界に限らず、これが世の習いというもの
であろうが…。

週刊文春の話に戻ると、小室哲哉の特集記事が面白かった。まさにこれこそ「天国と地獄」。百億円を稼いだ人間のドキュメンタリー・ドラマとしては、余りにも「コントラスト」が強すぎて、別の意味で目を覆ってしまった。

列車はあと15分ほどで博多に着く。それにしても、隣席のテレビ局関係者の喋りが異常にうるさい。手元にボリュームを下げるリモコンがないのを悔やんでいる。まったく…。