キヤノン事件に思う…全ては観音様がお見通し
‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐
「2月逃げ月」と言われるが、通常月よりわずか2、3日少ないだけで、随分と感じ方が違う。個人的なことを言うと、伯母が逝ってはや1週間だ。
新聞紙上をこのところ賑わしているのは、大分県などを舞台にした「キヤノン」関連の裏金・脱税事件。折角の企業誘致が台無しになってしまったかのような感じすらする。
今更言うまでもなく、キヤノンのトップは経団連会長も務める御手洗冨士夫さんだ。その故郷は宮崎県境に近い蒲江町。今では佐伯(さいき)市に合併されているが、数年前までは典型的な鄙びた漁村だった。
蒲江には一度訪れたことがある。ほとんど田畑はなく、役場のすぐ前は海。豊富な漁獲高を背景に、住民一人当たりの所得がびっくりするほど高かったのを覚えている。
以前テレビで紹介していたが、御手洗家は代々医者の家系で、歴代の当主が村(町)の要職にあった、という。一方の佐伯市は車で30分ほどの小都市で、やたらとでかい「鮨ネタ」で知られる。ここからは東芝の社長も出ている。
大分県ではこうした背景もあって、大企業の工場誘致がこれまで盛んに行われてきた。勿論、それには平松&広瀬といった旧通産省出身の知事による力も大きかったのだろう。
事件の全容はこれからの捜査で次第に明らかになっていくのであろうが、こうしたことで世間の注目を浴びるのは、同じ九州人として残念である。
ところで筆者は、社名の「キヤノン」は英語で「大砲」を意味する「キャノン」から来ているものとばかり思い込んでいた。恥ずかしながら、その過ちに気づいたのはつい最近のことである。
たまたま乗り合わせたJR九州の社内誌を読んでいて初めて、その語源が「観音」に由来していることを知ったのだ。
今日のキヤノンの隆盛をもたらしたのは、何と言ってもデジタルカメラである。フィルムカメラの時代は圧倒的にニコン勢が優勢であった。特に報道カメラの世界では。
かくいう筆者もキヤノンの一眼レフから写真の世界に足を踏み入れたのだが、プロ仕様のストラップが欲しいばかりに途中からニコン派となった。
取材の現場を離れて久しいので、今ではどんな機種が幅をきかしているのか知らないが、「シャッタースピードの点ではキヤノン(イオス)が群を抜いている」(西川完氏談)というから、主流はキヤノン製が占めているのだろう。
閑話休題。キヤノン、鹿島という日本を代表する大企業の名前が飛び交う今回の事件は、全国的な不況ムードとも相まって何ともやるせない。
事件の当事者は「全ては〃観音様〃がお見通し」という、社名にもつながる「事の道理」を忘れていたのだろうか…。
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