2009/04/27

「帰宅の心得」の要諦…憂えず、浮かれず、平常心

‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

その昔、四国のとある観光バス会社に「S」という名物ガイドがいた。器量は「十人並み以下」と言うより、「ブス」という表現が相応しいくらいだった。

ところが、このSさん、喋らせたらまさに天下一品!! 誰もかなう者がいない。筆者もこれまで多くのガイド嬢を見てきたが、彼女を凌駕する存在にまだ出くわしたことがない。

何が上手いかって、まず「間」(ま)の取り方が抜群だった。瞬時にどういう客層かを見分けて、それに応じた話術を駆使し、車内を大いに沸かせてくれた。彼女がいれば、もうその旅行は安心だった。

今でも印象に残っているのは、最後の挨拶のくだり。彼女はいつもこう結んでいた-。

「いいですか皆さん、疲れた切った表情でブスッとして帰っては駄目ですよ。かと言って『あー滅茶苦茶楽しかった。こんなに面白い旅はなかった!!』などと、やたら喜んでもいけません。ごくごく普通にしてお帰りください」と。

文字面を見れば、何の変哲もない言葉だが、彼女の口を通すと、「旅の極意」「金科玉条」として伝わってきたから不思議だ。

彼女に言わせると、旅に出ること自体、或る意味、日常生活から逃避すること。言葉を変えれば、「憂さ晴らし」だから、楽しいに決まっている。

ところが留守を預かる家族は、その旅行期間中もドップリと日常生活に浸っているわけだから、間延びした「ただいまー」の挨拶では〃金の無駄遣い〃と取られても仕方がない、と。

また、過度の喜びを表すことは「そんなに愉快な思いを自分だけして。少しは留守番をする身のことを考えてみろ。コンチクショー」と、家族に〃僻み根性〃を植え付けるのだという。なるほど、何とも〃含蓄〃溢れる言葉である。

そう言えば、この春の人事異動で島一中から有明中にかわった美術の松崎善幸先生が以前、こんな話をしていた-。

「他人の旅の土産話を聞くことほど退屈なことはない。それが海外旅行なんかであれば尚更だ。やれフランスでは、イタリアでは…などと賢しげに語られても、それはもう〃嫌味〃にしか聞こえない」と。

これまた、Sさんの話と通底する〃至言〃ではないか、と今改めて噛みしめている次第だ。

ところで、いよいよ「ゴールデンウイーク」が始まる。今年は不況の影響で長めの休暇を取る企業も多いようだが、当社の場合は「暦通り」。それでも5月3日からは4連休だ。

さあ、どこに行こうか?高速料金はどこまで行っても「千円ポッキリ」だから、久々に遠出でもしようかな…。

いや待てよ!帰宅した時の〃表情〃を今から考えておかないと。憂えず、浮かれず、平常心で!!