2009/05/11

柔らかな5月の日に…森『放浪記』ついに2千回

‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

「花ドロボー」は聞いたことがあるが、まさか「ジョウロ」まで狙われてしまうとは…。「ジョウロ」なのか「ジョロ」なのかはっきりしなかったので辞書を引いてみたら、どちらでもよいとの記述。ちなみに、漢字で書くと「如雨露」とあって、感心した次第。

盗まれたのはブリキ製の堅ろうな造りの〃高級品〃だった。会社の花壇に水をやった際に、置き忘れていたのを持って行かれたようだ。仕方がないのでホームセンターで6リッター容量の〃安物〃を買い求めた。英語表記では「ウォーターリング・ポット」と書いてあるが、日本人のせいか、やはり「如雨露」の響きに共感する。

それはそうと、爽やかな五月晴れが続いている。テレビでは森光子さん主演の舞台『放浪記』が通算で2千回の公演を迎えた、と騒いでいる。

御年満89歳(誕生日は5月9日)。体力も、知力も、演技力も要る「舞台」を、これ程の永きにわたって続けられるとは、誠にもってアッパレ!!

森さんで思い出すのは、昔懐かしい日曜夜9時からの「東芝日曜劇場」で放映された『天国の父ちゃんこんにちは』(TBS)という作品だ。

ドラマでは、森さんは女性下着の行商をしている未亡人で、これまた昔懐かしい!芸達者な園佳也子さんが人の善い隣のおばさん役をやっていた。

毎回の結びは森さんによる詩の朗読だった - 「貧しいから貴方に差し上げられるものと言えば、柔らかな五月の風と、精一杯愛する気持ちだけです。でも結婚してくれますね。でも結婚してくれますね」。

森さんご本人の人生航路に関しては、2年ほど前の日経新聞の「私の履歴書」に詳しく記されており、連載当時は大変に面白く拝読させていただいた。

〃直立不動〃で歌う昭和の大歌手、東海林太郎さんとの戦地慰問、菊田一夫さん(脚本・演出家)との運命の出会いもさることながら、森さんが鞍馬天狗役で一世を風靡した「アラカン」こと嵐寛寿郎さんの従妹と知って驚いた。

向田邦子・久世光彦のゴールデンコンビが生み出した『おかみさん時間ですよ』(TBS)も、別の意味で忘れられない。何せ血気盛んな頃であったから、毎回のように登場する番台のシーンには〃生唾〃を呑み込んでいたものだ。

失礼ながら、森さんにはスター女優特有の〃華やかさ〃は感じられないが、いつのまにか〃真ん中〃に座って、周囲が素直にそれを認めてしまう人だ。やはり〃人柄〃だろう。

その源泉になっているのは、人知れぬ気遣いなのか、負けん気の強さなのか…知る由もない。ただ、生きる世界は違えども、かくありたいと憧れる存在である。

森さんに倣って、もう「コソジョロ君」も許してあげる!!