2009/06/19

辻井さんと渥美さん…共通するのは優れた感性

‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

馬齢を重ねてくると、「名前」と「顔」が一致しないことがままある。相手の方は親しく話しかけて下さっているのに、どうしても名前が浮かんでこないのだ。結果、会話がぎこちなくなったりする。

その点、「有名人」はいい。あらゆる機会を通じて「情報」が刷り込まれているので、ボンクラ頭でも迷うことはない。ただ、似通った名前には、少々面食らうこともある。

その良い例が、先ごろの「第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール」で優勝した「辻井伸行」さんと、元ソニー最高顧問の「出井伸之」さん。まあ、単なる「語呂合わせ」のようなものだが…。

ところで、受賞後に何かとメディアに露出している辻井さんの表情を見ていると、筆者には「フーテンの寅さん」こと渥美清さんの持つイメージとダブってしまう。それくらい良く似ている、と思う。

こんな事を言うと、「コラッ、おいらの啖呵売(たんかばい)と、クラシックピアノの坊ちゃんを一緒にしてもらっちゃ、先方様に失礼だろうが。このタコ野郎!!」と、あの世の寅さんから怒られてしまいそうだが、もう書いてしまいました…。

辻井さんの初映像作品は、東京・サントリーホールでのコンサートの模様を収めた『川のささやき』というのだそうだ。専門家に言わせると、この「ささやき」という表現がいかにも「辻井さんらしい」というのだ。

この作品は辻井さんのオリジナル曲。通常なら「せせらぎ」とするところを、「(川)音が自分に向かって『ささやいて』いるかのように聞こえたから」とアエラ誌でのインタビューに答えている。

立場をわきまえもせずに言うが、何ともまあ瑞々しい「感性」ではないか!!小泉元首相の言葉を借りれば些か生臭さが漂うが、本当に感動した!!

ただ、その「感性」の問題で言えば、国民的映画俳優であった渥美さんの「それ」も、決して劣ってはいない、と思う。

手元に一冊の本がある。元毎日新聞記者、森英介さんが著した『風天~渥美清のうた~』というタイトルだ。大空出版刊。帯には「話芸の天才、渥美清の『知られざる俳句人生』」などとある。

この本を読んですぐに分かったのは、演じる寅さんとは真逆の路線を行くシャイな人柄と、並外れて優れた言語感覚だ。ランダムに何句か抜粋する。

〈お遍路が一列に行く虹の中〉〈乱歩読む窓のガラスに蝸牛〉〈好きだからつよくぶつけた雪合戦〉〈湯豆腐ののど元過ぎて腹熱く〉〈赤とんぼじっとしたまま明日どうする〉 - 。

「音楽」「俳句」と誠にもって門外漢ながら、今日もまた指先の赴くままに「駄文」を連ねてしまいました。あいすみません。