2009/06/05

ビジネスは、やり方次第…プロフェッショナルの視点で

‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

いま「農業」に注目が集まっている。経済誌や新聞社系の週刊誌でも特集記事が目立つ。もちろんテレビも黙ってはいない。

先日、NHK総合テレビで放映された『プロフェッショナル』(仕事の流儀)は圧巻だった。感動した、と言ってもよい。

番組が取り上げていたのは、千葉県で農業法人を営んでいる木内博一(ひろかず)。まだ41歳の若き経営者だ。

東京の大学を中退した木内は仕方なく家業の農業に戻るが、そこで感じた「理不尽さ」をバネに、本気で経営改革に取り組む。最初は5人からのスタートだった(現在は91人)。

まず取り組んだのは、都内スーパーへの産地直送便。予想以上に反応が良く自信をつかんだ。同時に売る側の視点で、価値あるヒントを得た。

偶然、陳列棚から醜くはみ出ていた長尺ゴボウの姿が目に留まったのだ。「カットして出せば、もっと売れるはず!!」。狙いは物の見事に的中した。

それを契機に、普段では売り物にならない規格外の「屑物野菜」のパッケージ販売に取り組んだ。またも当たった。

現在の売上高は約7億円。中には一人で1億円を稼ぎ出すツワモノまで出てくるようになった。

木内の挑戦はそこで終わらない。「立ち止まるな。次へ、次へ…」が木内のキャッチフレーズである。

つい先日は、オーストラリアのとある州政府が木内の取り組みに興味を示し、「糖度の高いトマトの栽培をやらないか」と提案してきた。

広大な農園経営に夢を膨らませて現地まで足を運んだ木内だったが、感じるところがあって、その提携話を断念した。引き際も見事である。

新たに木内が始めようとしているのは、何度でも収穫が可能な「ハウスレタスのカット栽培」。学者とのベンチャービジネスだ。

木内は言う。プロフェッショナルとは - 「信念をしっかり持っていて、なおかつ環境や時代に柔軟に対応できる人」。

以前に観た他局の番組では、同じく一般市場では売り物にならない「雑魚」を大量に買い付けて、顧客の開発・拡大につなげた岐阜羽島の地方スーパーの経営者を取り上げていた。

朝日新聞・アエラ誌によると、日本農業の市場規模は約80兆円。昨今の経営危機を引き金に、新たに農業ビジネスに触手を伸ばす企業も相次いでいる。

そのうちの一つ、渡邉美樹(政府教育再生会議委員)率いる「ワタミ」が手がける生産法人の栽培面積は475ヘクタール。全国各地の「和民」ばかりでなく、スーパーからネット販売までと裾野が広い。

ビジネスは、やり方次第。恵まれた栽培環境にある島原半島はまだまだ大きな可能性を秘めている。出でよ、農業プロフェッショナル!!(文中敬称略)