2009/07/01

リスクは人生のスパイス…ストレスは生活のスパイス

‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

よく『天声人語』なんかで、筆者がその折々で耳にして気に入った「フレーズ」群を、オムニバス的に紹介することで、お茶をにごしていることがある。

特段、その手法を真似するわけではないが、本日の「見出し」に掲げた二つの文章は、いずれもごく最近、私自身の目と耳に直に触れた、非常に納得のできる表現なのである。

上段の言葉は、いま話題のベストセラーとなっている村上春樹氏の『1Q84』(上巻)の中で語られている。最初のうちは斜め読みしていたのだが、そのうちにはまり出して、今では毎日のように精読している。何せ、千ページを超える大作。時間がかかる。

どのようなシチュエーションの中で発せられた言葉なのかは、本篇をお読みいただくとして、一度でいいからこんな気障な(?)言葉を吐きたいものだ。勿論、美人を相手に。

その余韻も冷めやらぬうちに下段の言葉に触れてしまったので、これはもう心理学用語でいうところの「シンクロニシティ」(共時性原理)に違いない、と小躍りした次第。

紹介が遅れたが、この言葉は先ごろ行われた宅島企業グループの「安全大会」で講演に立った、伊崎脳神経外科・内科医院長の伊崎明さんから伺ったもの。

いずれの場合も「スパイス」がキーワードとなっている。それを人生という長期スパンで捉えるか、日常の生活で味わうか、の違いだけだ。

スパイス。すなわち香辛料は決して主役にはなれないが、ある意味、料理には欠かせないもの。無ければ、その料理全体がどことなくフヌケた代物になってしまう恐れがある。

歴史を振り返ると、17世紀から18世紀にかけて、欧州列強の東インド会社がアジアにおいて覇を競い合ったのも、元はと言えば「香辛料」をめぐる利権争いであった。

スパイスは効きすぎれば、時に麻薬のようにもなる。したがって、過度のリスクもストレスも厳に慎まなければ、かえって害を及ぼすことにもなる。

ところで、今でこそカレーの辛さを数値で表すスタイルは当たり前になってしまったが、その走りは東京の「ボルツ」という専門店だった。今でも続いているのかどうか知らないが、それはそれは辛かった。

最高の「30倍」を食べると、食べ終わった直後の顔写真を店内に飾ってくれるというのがルールだったが、いずれの征服者も放心状態で撮られていた。

「万事中庸」を心掛けていた筆者は「14倍」に挑んだが、あえなく撃沈。言い訳がましいが、福神漬けの代わりがタカノツメだったことを想えば、ご納得いただけるであろう。

本当はもっとスパイスの効いた文章を書きたかったのだが、いかんせん能力と時間が足りなくて…。