少し先走り過ぎでは?…春日一幸さんと般若心経
‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐
いよいよ総選挙である。一節によれば、今回はやたらと期日前投票が多いとか。果たして、何の〃予兆〃だろう。ところで、終盤になっても「民主有利」の風が凄まじいようで、各紙とも競い合うかのようにその状況を報じている。あたかも「もう勝負がついた」と言わんばかりに…。
報道機関にとって「不偏不党」はその規模の大小に係わらず、忘れてはならない基本中の基本。同時に、選挙は民主主義の根幹を成すもの。言わば、国民一人ひとりに等しく付与された「権利」である。
これを行使するに当たっては、他からの口出しなど一切聞く必要なし。敢えて例えるなら、自分だけに与えられた「聖域」のようなものだ。
ところが、マスコミ各社は国民が投票行動に移る前から、「事前調査」と称して「どの党が優勢だ」などとの情報を繰り出す。そして、必ずと言ってよいほど「まだ有権者の何割が投票先を決めかねている」と言葉を濁して最後を結ぶ。些か偏屈な見方かもしれないが、予想が外れた場合を想定しての「保険」のようなものだろう。
選挙に限らず、何でも行き過ぎは良くない。確かなデータに基づいているとはいえ、最終&最後にその権利を行使するのは、有権者なのである。
今のような世相を煽るかのごとき事前報道は、不定見な「勝ち馬乗り」を大量に醸成するばかりだ。より端的に言えば、今回の選挙は「小泉チルドレンから小沢チルドレンへの交代劇」を観ているようなものなのに…。
かつて、古巣の自民党幹事長だった頃の総裁選で、小沢さんは「神輿は軽い方がよい」とうそぶき、弱小派閥出身の海部俊樹さんを担いだ。時は流れて、海部さん(愛知9区)も、そして現代のキングメーカーこと森喜朗さん(石川2区)も〃大苦戦〃だと報じられている。
その森さんの対立候補(小沢刺客)は、河村たかし名古屋市長(前民主党代議士)の秘書だった、田中美絵子さんという33歳のうら若き女性だ。
話は脱線するが、河村さんが秘書として仕えていたのは、かつて民社党委員長を務めていた春日一幸さん。分厚い唇から弾き出される独特のダミ声演説は、党派を越えて人気があった。
佐野眞一さんが最近著した『新忘れられた日本人』(毎日新聞社)の中で、春日さんの〃人間的魅力〃を伝えている。その一部(骨子)を少しだけ引用する - 。
〈最盛期には、誰も見向きもしないような婆さんの愛人が7人いたが、いざ選挙となると、それぞれが八面六臂の大活躍。嫉妬する夫人に対しては、羽交い絞めにして耳元で「般若心経」を唱えることで、その怒りを鎮めていた、とか〉
真偽の程は定かでないが、口癖だった「今般の政治状況を省みれば…」との名調子を思い出しつつ、つい腹を抱えて笑ってしまった。失礼!!
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