2009/09/15

背広よもやまばなし…ますます高じる〃物忘れ〃

‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

一週間ほど前の新聞に、ロンドンの「サビルロー」の奮闘ぶりが紹介されていた。詳細は良く覚えていないが、「バブル崩壊もリーマンショックも雄々しく乗り越えて…」といったような内容だった。

一般的には、「サビルロー」転じて、日本語の「背広」になった、とされている。平たく言えば、その街は紳士の国イギリスの代表的な「仕立屋さん」が集積している場所だ。

〈青い背広で心も軽く 街へあの娘と行こうじゃないか♪〉。佐藤惣之助作詞、古賀政男作曲の『青い背広』を、藤山一郎があの独特の高音域で歌い始めたのは昭和12年のことだという。その2番の歌詞は〈お茶を飲んでもニュースを見ても 純なあの娘はフランス人形♪〉と続く。

その「フランス」で言うと、詩人の萩原朔太郎は「ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し せめては新しき背広をきて 気ままなる旅にいでてみん」という詩篇を残している。

同じ「背広」という単語なのに、文脈によって随分と違うものだ、と感慨深く眺める、我が「くたびれ背広」。昨夏、郊外の量販店で買った1着2万5千円、しかも2パンツ付の「安物吊るし」だ。

色はダークグレーに淡いストライプ柄。値段以上に重宝しているのだが、やはり出る所に出ると〃出自〃がバレてしまう。でも一年以上も一緒にいると、つい情が移って愛おしくなっているのも事実だ。

ところが先日、その「大事な背広」をこともあろうに〃紛失〃してしまったから、さあ大変!ゴルフ場だろうか、それとも2次会で行ったスナック?続けざまに電話をかけてみるが、行方は杳(よう)として知れず。

「どうせ安物じゃんば…」などと高をくくって諦めかけていたところに、我が社工事班の若者から報告。「ガソリンスタンドの待合室に専務の背広んあったそうですよ」。

本当は小躍りして「ヤッター!」と叫んでしまいそうだったが、「おー、そうか…」と無理して余裕をかます自分が情けない。

このところ、物忘れがひどくなった。まず、人様の名前がなかなか浮かんでこない。別段、覚えていない訳ではないのだが、悲しいかな、即座に思い出せないのだ。

三男坊に言わせると「酒ん飲み過ぎで、脳味噌ん腐りよっとじゃ」。傍らで家人と母が「我が意を得たり!」といった表情。悔しいけど、半分は当たっているので反論できない。

間もなく54回目の誕生日を迎えるが、昔なら、あと1年で〃定年〃を迎える年齢だ。東京・渋谷公会堂で行われたグループの合同入社式で〃総帥〃がおっしゃった。「君たちに会社が支払う生涯賃金はざっと2億円だ。しっかり稼いでくれよ」と。

はて、これまでどれくらいが〃酒代〃に消えたか?これも思い出せない。