2009/12/11

イタリアの中国人?…ユニクロ一人勝ちに〃警鐘〃

‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

先般、「ダウンコート」なるものを買ってもらったが、これがすこぶる着心地がよい。何より軽い!そのうえ暖かい!久々に「良品」を手に入れた、という気分だ。

それがいつ頃から流行り出した代物(しろもの)なのか定かでないが、昭和50年代の半ばには、すでに意気揚々と羽織っていた「洒落者」がいたようにも想う。

確かその当時は、目ん玉が飛び出るくらい高くて、とても学生やサラリーマンなどが手を出せるような頒布品ではなかった。ただ、いつの世でもそうだが、「モドキ」商品はいくらでもあった。筆者も香港ツアーに出かけた際に、その「モドキ」(パーカー)を買い求めた記憶がある。

中国本土へ返還がなされた今となっては、もうあるのかどうか知らないが、当時「泥棒市場」と呼ばれる闇市があって、そこで買った。千円だった。

別段、見栄えも悪くなかった。胴体と両袖が肩口のジッパーで繋がっている仕掛けも斬新に映り、大いに気に入っていた。「ベスト」としての利用も可能だったからである。

ところが、それが「ヌカ喜び」に過ぎないことをほどなく知らされる羽目に。仲間の誰かが左袖を軽く引いた途端に、見事にジッパー部分が瓦解してしまったのである。

その時ほど「安物買いのゼニ失い」という言葉を深く噛みしめたことはなかったが、「失っても千円。ベストでいいもん」と、その後も長らく愛用した。

話は変わって、発売されたばかりの文藝春秋1月号の巻頭随筆の中で、イタリア在住の作家、塩野七生(ななみ)さんが面白いことを書いている。題して「価格破壊に追従しない理由」。

塩野さんは、ユニクロだけが「一人勝ち」している日本経済の現況を憂えた口調で、「似たような状況は、イタリアでも起っている」と警鐘を鳴らす。

それによれば、「二、三の最高級ブランドを除けば、日本人がイタリアン・モードと思っているブランドの多くは、中国式の商いのやり方に屈している」というのだ。

より分かりやすく言えば、「不法入国によってイタリアに在留している中国人を、合法的に入国した中国人が地下工場などで使って、イタリアン・ブランドを産出している」と。

背景にあるのは人件費の安さ。イタリア職人の10分の1の経費で、「メイド・イン・イタリー」が出来上がっているのだそうだ。

塩野さんはこうした状況に眉をひそめたうえで、「本物のイタリア職人が作ったアルマーニのような高級品には、想像力を高める何かがある」と、買い物本来の楽しさを語っている。

ちなみに、筆者が満足しているのは、日本製の「Gap」。アルマーニとは随分と「ギャップ」があるようだが、嬉しい!!