門松は「漢方」そのもの… 松・竹・梅・それぞれの効用
「門松は冥土の旅の一里塚」とよく言われる。まさにその通りの意味だが、この後に「めでたくもありめでたくもなし」(一休禅師)と続けば、より分かりやすくなろう。
正月を迎えるに当たっては、家々の玄関先には「門松」が飾られる。まさに代表的な日本の正月風景の一つだが、読者の皆様方は、この飾り付けに人々の健康を願う「漢方的な意味合い」が含まれていることをご存知だろうか?
新年早々、何やら知ったかぶりな書き出しで恐縮だが、カボチャテレビ&FMしまばらの生番組『ターニングポイント』(ほぼ毎週水曜日午後7時から放送)にもご出演いただいた、崇城大学薬学部・村上光太郎教授のお話を聞いて、思わずヒザを叩いて納得した次第。以下は同教授の個人的特別講義から - 。
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そもそも、日本に「漢方」が伝わってきたのは室町時代。月湖(げっこ)という僧侶が持ち込んできたのが始まり、とされている。当時の考え方で言うと、「僧≒医者」であった。
その後、本格的な医療として発展させたのは、田代三喜(たしろ・さんき)。その弟子が曲直瀬道三(まなせ・どうざん)で、そこに至って、日本の漢方が確立した。道三は室町末期から戦国の世にかけて多くの武将たちに重用され、「日本医学中興の祖」と呼ばれている。
その道三の養子となったのが玄朔(げんさく)で、こちらも名医の誉れが高かった、という。そこに弟子入りしたのが吉益東洞(よします・とうどう)。
その手法は、遠く「漢」代まで遡る「古方派」と呼ばれ、「すべての病気はひとつの毒に由来する」という万病一毒説を唱え、緩慢な治療法を推奨する月湖系の「後世派」と激しく対峙した。
随分と前置きが長くなってしまったが、「門松の薬学的効用」を説いたのは、東洞の息子の南涯(なんがい)で、独自の理論を構築している。余談だが、映画等でも取り上げられている華岡青洲はその弟子。
門松の主な材料は、ご存知の通り、「松」「竹」「梅」である。南涯は「生薬の元」となるそれぞれの植栽に、「血」「水」「気」という三つの薬効を連動させた。すなわち、「松=血」「竹=水」「梅=気」とする考え方である。
ここから先の村上教授の説明が面白い - 。「松は血を浄化します。松葉に砂糖と水を加えれば、自然発酵で血液サラサラ効果のある『松葉酒』ができます。竹は『カッポ酒』の器としてリンパ液を綺麗にします。梅は胃腸(気)を丈夫にします。自殺者はたいてい、胃腸の弱い(気力のない)人たちです」。
さすがに「松葉酒」は試したことはないが、「カッポ酒」は取材先などでご馳走にもなるし、梅干は毎日の弁当の定番の一つだ。
「梅」に関しては、さらに村上教授の説明が続く - 。「種の芯に、白い部分があるでしょう。あれが体にとてもいいんです。『仁』と言いまして、沢山の食物繊維を含んでいて、便秘の特効薬ですよ。そのまま食べて結構です」
取材を終えて、村上教授の教えのままに、大宰府天満宮まで車を走らせた。同神社は言わずと知れた「飛梅伝説」の地にあるが、実は神社建立以前に「武蔵野寺」というお寺院があって、周辺には広大な梅林が広がっていた、という。
教授によれば、そこの住職は胃腸が弱かったが、梅のおかげで健康を取り戻し85歳まで長生きしたとの言い伝えがある、という。筆者の参拝目的は、その名残りの「梅塚」を探すこと。
地図を頼りに太鼓橋を渡ってウロウロしていたが、すぐ右手の本殿脇に確かにあった!中には、梅干の種をまとめたビニール袋が幾つか。名前を書いておけば、翌春には青梅が貰える、ということだった。
なるほど、古の昔から人々は健康を守る術を知っていたのだ、ということが分かって、何だか無性に嬉しくなった。皆様、今年もお互い健康体で頑張りましょう!!
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村上教授の著作『大地の薬箱』が1月末に農山漁村文化協会から出版されます。同協会は『現代農業』(月刊誌)などを出している所です。楽しみにして待ちましょう!ところで、カボチャテレビでは同教授の講演会を4月3日(土)に予定しています。時間や会場については、正式に決定してから改めてお知らせいたします。
1 Comments:
清水さん明けましておめでとうございます。
口之津ボーイです。漢方の話面白かったです。最近私も漢方に興味を持っているところですが、島原市には東洋医学会の長崎県支部会長がいらっしゃるのですよ。ストレスクリニックウィングの川口哲(さとし)先生です。お会いしたら面白い話しが聴けると思いますよ。
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