2010/02/05

公方俊良師の講演(4)…混迷を打破するリーダーの着眼点

‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

「禅問答」とは何やら分かりづらいことの例えのようだが、このレポートを読み進めているうちにハタと膝を叩く機会も多い。ひょっとして、世の仕組みや人の心なんてものは、単純至極なものなのかも知れない。とにもかくにも、前向きに生き抜くことだ!

(4)

公案第4則。中国唐代の禅僧、い山霊祐が百丈和尚の室に入ると、和尚が火鉢をかき混ぜている。「どうなされました」と、い山。「寒くてかなわんから火種を探しているのだ」。「では私が探しましょう」と火箸を受け取り、火鉢の中をかき混ぜるが、ない。「和尚様、火種はありませんよ」。すると、い山の胸倉を掴んで和尚は言った。「これが火種ではないのか!」。

い山は悟る。「火種とは、すべての人に備わっている仏性のことなのだ」と。お釈迦様も説かれている。「人間には誰もが生まれながらに、この世で一つだけしかない宝物である仏性を頂いて生きている」と。その宝物を発見し、生きていくところに人生の充実があるのだ。企業の場合も、内に秘めた「宝」を開発していくのが、商品開発であり、事業開発なのである。

好況の時はスピードが求められた。不況になれば急ぐ必要はない。時間より大切なものがある。それはおカネだ。今はカネをかけずに、じっくりと新商品、新事業を研究して育てていく時である。松下幸之助氏は言う。「不況もまた良し」と。さらに「景気がいい時は懸命に働き、不景気の時は製品開発や経営革新を行えば、それが次の発展につながる」と。

公案第5則。中国唐代の名僧と弟子の問答「門の外で音がするのは何の音か?」「雨だれの音です」「修行は自己を見失って外にものばかり追っている」「そういう和尚様はどうなのです?」「わしは見失わぬ」。さて、どこが違うのか?和尚の場合、雨だれと自己が一体の境地になっている。つまり、対象に心を奪われない「人境一如にあり」ということ。

企業で大事なのはCS(顧客満足)、ES(従業員満足)、SS(社会満足)の追求にあると言われる。不況になるとつい疎かにされるのが、ESではないか。好況の時は「企業は人なり、人こそ宝」で社員は金の卵を産む鶏だ。が、いったん不況になると、社員がカネ食い虫に見える。経費削減というと、一番大きい固定費が人件費だから、人員削減に走りがちとなる。

これでは一体経営はできない。リストラは世代間や技術伝承の断絶を招く。切られる方には恨みが残り、残った者も「次は俺か」となり、生産性アップどころでなくなる。どうせ辛い思いをするのなら、別会社でベンチャー企業を立ち上げて、そこに人を吸収して、頑張らせてみる。そうすれば全員が前向きになり、思わぬ良い展開になることもあり得る。  -つづく-