2010/02/05

公方俊良師の講演(5)…混迷を打破するリーダーの着眼点

‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

本連載もいよいよ今日が最終回。「U先輩」には誠に絶妙のタイミングで時宜にかなったご寄稿をいただいた。さて、一昨年9月の「米プライムローン騒ぎ」をきっかけに、「世界同時不況」という言葉が飛び交っているようだが、まさに「言葉は言霊(ことだま)である」から、あまり不景気!不景気!と騒ぎ立てるのも、いかがなものか?

おっと!これは前自民党政権の麻生総理の口癖だったか…。何日か前の全国紙に同政権を支えた河村建夫前官房長官の談話が紹介されていて面白かった。同総理はベランメー口調でまくし立てる一方で、実に気配りの人であった、と。退任後にお世話になった方々に筆書きの礼状を出されたそうだが、女房役の官房長官へ届いた宛名は「健夫」様となっていた、とか!?

これなどは小さなことには拘らない、同総理の磊落な気質を表しているエピソードの一つだが、弊社の取引先でもある在京の某ベンチャー企業の社長がしみじみと語っていた。会員制スポーツジムでの話。裸の麻生さんは「謙虚な人柄」で少しも偉ぶったところなどない、と。その点、横着で頭にくるのが「○○○○○」(某有名政治家)だ、ということだ。

まあ、とかく人物と言うのは「見かけ」や「噂」にはよらないもの。公方師の教えをもとに「真贋を見極める眼」をしっかりと養ってまいりましょう。では、最終のまとめに入ります。

(5)

昨年のNHK大河ドラマ『天地人』の直江兼続。謙信の「義」の精神を受け継ぎ、上杉家を成功に導く。関ヶ原後は米沢へ移封され、収入も4分の1に減って困窮する。が、兼続は6千人いた家臣を一切リストラせず、重臣たちは自らの収入を削って家臣たちに配分した。まさに「ワークシェアリング」である。苦境の今こそ、雇用を守ることが「企業の義」ではなかろうか。

明治維新の時、廃藩置県が行われ、多くの武士がリストラされた。路頭に迷った彼らを見かねた幕臣渋沢栄一翁は5百余の会社や銀行を設立して救済した。彼らが実業界で活躍したおかげで「論語と算盤」(倫理と利益)を追求するという今日の日本型経営の礎が築かれた。変革期の今こそベンチャー企業を立ち上げ、日本の国力を高めていただきたいと切に思う。(了)

※    ※

順序が後先となってしまったが、「M先輩」による「前書き」の章を紹介することで、本稿を結ぶことにする-。テーマの副題は「禅の公案に学ぶ」というものでした。5人の名僧の「公案則」から混迷期を打破するリーダーの着眼点を模索されている公方師の名講演です。経歴は「中央仏教学院卒→天台宗門跡寺院で得度→現職兼・国際仏教伝道学院長、毎日文化センター宗教講座講師」など。経営知識も豊かで、かつ随所に散りばめられていて説得力があります。