2010/04/13

井上ひさしさん逝く…〃減反〃に怒り心頭だった

‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

今日は「訃報」の話。ただし、どなたも身近な人物ではない。まずは作家の井上ひさしさん。山形県出身。75歳。各紙とも大きくな取り扱いだ。

多方面で活躍された方だが、我々世代にとっては、何と言っても『ひょっこりひょうたん島』(NHK)。ガキの頃、食い入るようにその画面を眺めていた。

博士、ドン・ガバチョ、トラヒゲ…。個性あふれるキャラクター揃いで、それぞれ、中山千夏、藤村有弘、熊倉一雄といった錚々たる顔ぶれが「声」を担当していた。

小説『手鎖心中』で直木賞に輝いたのは昭和47年。筆者がその〃生身〃を拝見したのは昭和50年のこと。永六輔、小沢昭一さんらと共にコンサートの舞台に立たれた姿だった。

確かその場は小沢さんが〃仕切り役〃で、お得意のハーモニカを演奏されたのだが、井上さんは「ボクは〃出っ歯〃なので、巧く吹けないんだなぁー」と、軽妙に交わされたように憶えている。

後年、テレビ番組の中で烈火のごとく怒られている姿を見かけたのは、時の政府が「減反政策」を打ち出した折のこと。「貴重な水資源を涵養していく意味でも、日本古来の水田を枯らしてならない!愚挙だ!」との主張には、同じ田舎育ちの身として大いに共鳴したものだ。

果たして、その後の展開は…。日本中、全国に広がる、草ぼうぼうの荒廃地。我が国有数のコメどころの新潟県でさえ、荒涼たる風景が広がっている。これがまがうことなきニッポンの田舎の現状だ。今改めて、その〃慧眼〃に脱帽。

次いで、ジャーナリストの「ばばこういち」さん。この方もテレビでおなじみだったが、3年前に、同じく東京12チャンネル出身の田原総一朗さんと共に出られたCATV関連の講演会で、その〃謦咳〃に接した。

印象に残っているのは、話の内容より、むしろそのダンディぶり。ロマンスグレーの長髪を腕まくり姿でかき上げ、舌鋒鋭く問題の核心に切り込んでいかれた。大阪府出身。77歳。

最後に、島原市出身の『海燕』初代編集長、寺田博さん。島高から早稲田に進み、卒業後は宇野千代さんが創刊したスタイル社へ。その後、学燈社を経て、河出書房新社に移る。

そこで出会ったのが、再刊された『文藝』の名物編集長、坂本一亀さん。言わずと知れた、「教授」こと坂本龍一さんの父親だ。

もっとも、この方の「訃報」については、すでにひと月以上も前のことなので、すでにご存知の方も多いと思うが、諸事万般に詳しい平尾明さん(元島原市役所)から「文藝春秋5月号の蓋棺録に掲載されている」とのお知らせを受けたので、遅まきながら - 。

【追伸】今週の『ターニングポイント』は出張のため休みます。