2010/04/24

松永先生の「バホー」…含蓄豊かな日本語の表現

‐株式会社ケーブルテレビジョン島原専務 清水眞守‐

愛すべき我が息子(三男坊)の大好きなI先生が叱る時の口癖は「この愚か者めが!」だそうである。それとは何の因果関係もないが、このほど行われた党首討論で、鳩山首相は自らを「愚か者」と称した。

一向に埒(らち)が明かない「普天間基地」問題を巡っての谷垣自民党総裁とのやりとりの中で出てきたものだが、同じ「愚か者」でも、もう少し元気を出していただきたい。何だか余りの覇気の無さに、心配が先立ってしまう。

その「愚か者」に相当する言葉については、一般的には、関西が「阿呆」(あほ・あほう)と呼ばれているのに対し、関東では「馬鹿」(ばか)が使われているようだ。

その境目がどこに引かれているのか定かでないが、ちょうどその「中間点」に位置する名古屋近辺では「たわけ」が主流のようだ。ちなみに関西の「ど阿呆」に匹敵するのが「くそたわけ」。「これを言われたら本当にガックリくる」と、ある愛知県人がこぼしていた。

ただ、こうした蔑み(?)の言葉には、ある種「親しみ」が込められているのも事実である。大阪近辺で「あいつは阿呆な奴やでー」と言われても、「人間性」自体を否定しているものなんかでは決してない。むしろ「褒め言葉」に近い、と言ったら言い過ぎか!?

一方、関東の「馬鹿」にしたって、可愛らしい女の子が「馬鹿、馬鹿、もう知らないから…」などと言って涙を浮かべたりする様は、これはもう「愛情の裏返し」に他ならない。

このあたりが「フーリッシュ」や「スチュピッド」などといった単一的な表現しかない「英語」との大きな隔たりであろうか!?と言っても、何の根拠もないのだが…。

ところで、島原弁では「馬鹿」「阿呆」の類いのことを何と言うのだろう。すぐに思い浮かんでくるのは「ツークレ」とか「ツータクリン」といった言葉だが、他に何があるかな…?

10年近く前に島原高校の校長をなさっていた松永勇先生は物理が専門で、筆者も口加高校に在任されていた折に教わったことがある。その頃の先生の渾名は「バスクリーン」だった。由来はいたって簡単で、その当時、テレビのCMで流れていた外国人タレントに似ている、というただそれだけのこと。

その後の人事異動で島原高校に赴任された同先生の渾名が傑作なので、謹んで紹介しておく。それは「バホー」というもの。物分りのよい読者の方ならもう気付かれたと思うが、それは「バカ」と「アホー」の組み合わせ言葉である。

さらに詳説を加えるなら、授業の最中に興奮してしまった同先生が思わず口走ってしまった、というのが真相らしい。どうせなら鳩山さんも「私はバホーですから」と開き直れば、少しは議論の「バッファー」(緩衝材)になっただろうに…。