2010/05/23

隆尋さんかく語りき…愛の反対は嫌いでなく無関心

〈亡くなった東京大学教授(西洋史)の木村尚三郎さんが、よくこうおっしゃっていた。『住んでよし、訪れてよし、の地域づくりを!』と〉

〈いかにも『観光地然』とした設定だけでは、地域づくりは失敗します。まずは、そこで暮らしている人々の『満足度』を高めないことには!そのためには『教育』が必要です〉

〈ただし、『教育』には幾通りもあります。『知育』『体育』『徳育』…。最近は『食育』というのもありますが、食とは『人』が『良い』と書きます。食は文化です〉

私はこれに加えて、『郷育』という考え方を提唱したい、と思います。つまるところ、『地域づくり』とは『人づくり』に他ならないんです〉

〈イギリスの歴史学者、トインビーはこう言っています。『民族を滅ぼすのはいとも簡単だ。その民族の歴史や文化を教えなければ、それだけで滅ぶ』と〉

〈日本には古の昔より松涛(しょうとう)や虫の鳴き声を愛でる習慣がありますが、そうした『文化的DNA』(ミーム)を伝えていかなければ、それらは単なる雑音として処理されてしまいます〉

〈もちろん『愛国心』は大切ですが、それよりもまず『愛郷心』を育むこと!そのためには、『地域の文化』を大切に伝えていくことが必要です〉

〈ただし、『愛』という概念は非常に難しいですね。NHKの大河ドラマにもなった直江兼続の兜の『愛』は、『愛染明王』から来ていますが、その解釈は何と言ってよいのやら…〉

〈その点、より分かりやすい表現でマザー・テレサが『愛』について語った言葉があります。『愛の反対は憎しみでなく無関心だ』というものです。いくら『アイ・ラブ・○○』と言っても『無関心』ではいけません〉

〈余談ながら、『嫌い』は『好き』の裏返しです。『愛郷心』を植え付け、育むという意味では、皆さん方が担っている責任は非常に大きいですよ!〉

〈話は変わりますが、私の大嫌いな言葉の1つに『勝ち組』というのがあります。ビジネスの世界でも使われているようですが、そもそも『戦(いくさ)』と『商い』とは別物ですから、そのまま当てはまるわけがありません〉

〈まあ、人心の掌握術やロジスティックなど幾つか『共通点』はあるでしょうが、『客』が介在するという意味では、まったく異質のものです〉

〈『戦』は『武力』と『武力』とのぶつかり合い。周囲の景観なんにかまっていられません。一方、『商売』では、店が汚ければ、お客様は来ません〉

〈同じく過った考え方に『地域間競争』というのがあります。隣の町が滅んだら、間違いなく自分達の町も滅びます。今後は『勝ち組』ではなく『価値組』を目指しましょう!〉

‐つづく‐