和菓子のソニー?…「叶匠寿庵」発展の秘密
先般、ひょんなことから島原菓子工業組合(藤田昌之会長)の総会で挨拶をさせられる破目に。藤田会長とはもう長年の付き合い。加えて、息子の昭比古君とは「不肖の兄弟」(ヤクザじゃないよ!)でもあることから、宴会前に少しだけお時間を頂戴した次第。
が、本音を言えば、正直、面食らってしまった。業界の支持を得て立候補するような政治家という立場でもないし、かと言って、普段からお菓子の研究なんかしてないし…。
「どうしよう?」と困り果てる直前に思い出したのが、以前に読んだことのあるノンフィクション作家、佐野眞一さんが著した『新忘れられた日本人』(毎日新聞社)という本だ。
たまたまその日は東京出張から帰ったばかりだったので、急ぎ荷物を自宅に置いた後、事務所へ直行。乱雑な本棚から目指す一冊を取り出して、職人さんの「仕込み作業」よろしく〃通読〃に努めた。
と、あった!あった!最初に読んだ瞬間、心の底から〃感動〃した一章が。「今日はこれをベースにすれば、立ち往生することもあるまい」と安心して会場に臨んだ、というわけだ。
前置きが長くなってしまったが、主人公の名前は芝田清次さんという、元警察官の方だ。ついでで恐縮だが、お店の屋号は「叶匠寿庵」。本店は滋賀県大津市にある、という。
芝田さんはすでに鬼籍に入っており、現在の当主は二代目ということだが、創業は昭和33年というから〃老舗〃というほどの歴史もない。
ところがこの寿庵、創業から20年足らずで「和菓子のソニー」というほどの名声を博すまでに発展する。佐野さんの取材によれば、その〃礎〃となっているのは、何と言っても創業者の人柄。
戦傷のため片方は義眼というハンディを負いながらも、立派に警察業務をこなす一方で、「このまま定年を迎えても人生の意味がない」と、恩給がつく1年前に依願退職。時に39歳。
お客様を常に大切にするという「経営方針」を徹底して貫き、創業後わずか10年弱で、松下幸之助夫人や裏千家、正田家などの錚々たる顔ぶれが〃お得意さん〃となった。
従業員のほとんどは貧しい山村の出。知的なハンディを負った者や少年院帰りも少なくなかった、という。それでも彼らは芝田さんを中心に、「日本一の菓子づくり」を目指した。
紙幅の関係で、多くの感動的なエピソードは紹介できないが、自らの「傷病恩給」から少年院帰りの元悪童に小遣い銭を渡して可愛がっていたという実話には思わず涙腺が緩んでしまった。
こうした〃愚直〃とも思える家族主義経営で、全国直営店8、デパート等のテナント数は54、年商は約37億円だという(数字はいずれも取材当時)。少しは参考になっただろうか…。
1 Comments:
いつも楽しく観ております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
コメントを投稿
<< Home