2010/09/09

梅屋庄吉翁のこと…来年は辛亥革命100周年

「事実は小説より奇なり」とよく言われるが、本当にそんな「奇特な人物」が存在したのだろうか?しかも、我が長崎県人に…。しばし、そんな思いに捉われてしまうほどの読後感である―。

東京・日比谷公園内の洋風レストラン「松本楼」と言えば、毎年9月25日にふるまわれる「10円カレーチャリティ」の店として知られるが、最近になって再び、同社常務の小坂文乃さんが著した『革命をプロデュースした日本人』(講談社)という本で注目を集めている。

「革命」とは、来年10月10日で勃発から百周年を迎える中国の「辛亥革命」のこと。「日本人」とは、長崎市出身で、映画会社「日活」創業者の「梅屋庄吉翁」のことだ。小坂さんはその曾孫に当たる。

今さらこの年齢(とし)になって「歴史」の勉強でもあるまいが、全国少年ソフトボール大会の開会レセプションの席で、たまたまお会いできた長崎県の藤井健副知事からその話を聞き、俄然興味を抱いた次第。

さっそく先月初めの上京の折に、有楽町の三省堂書店で関連の書籍を探してみたが、1冊も置いてなかった。ならば!と訪ねたのが長崎市の紀伊国屋書店。そこには、読売新聞西部本社版のムック本と併せて、小坂さんの著書が平積みされていた。

すでに長崎新聞紙上で何回かにわたって紹介記事も掲載されているので、ご存知の方も多いと思うが、とにもかくにも、この「梅屋の爺様」は誰もがビックリするほどの〃超大物〃なのである。

藤井副知事によれば、同蜂起を主導した孫文(中国革命の父)らに調達した資金の総額は、現在の貨幣価値に換算すると、軽く「2兆円」は超えるだろう、という。

詳しくは是非作品を読んでいただきたいが、登場する人物の氏名だけ拾っていっても、唖然とするほどの〃超豪華ラインナップ〃なのだ。

革命の主役である孫文や蒋介石はもちろんのこと、日本人の顔ぶれがこれまた凄い。順不同で恐縮だが、宮崎滔天から始まって、頭山満、大隈重信、犬養毅、柳沢白蓮などなど…もうタメ息が出るほどだ。

映画会社の創業者で政治的にも辣腕をふるったそれほどの〃超大物〃あるにも関わらず、どうして「梅屋庄吉」の名前が今日まで人口に膾炙(かいしゃ)してこなかったのか…?

そうした素朴な疑問に率直に応えようとした姿勢こそが、この作品の「存在価値」でもある。くどいようだが、実際に読んでみないことには、梅屋夫妻の人となりも、その歴史的な功績も分かるまい。

「来年は長崎にとって、また日中関係にとって、とても意義深い、面白い年になりそうですよ!」。藤井副知事の自信あふれる言葉に、期待は膨らむばかりだ。