2010/10/23

西日本最高峰に立つ!!…初めて見たブロッケン現象

鳥居をくぐり抜けるとすぐ、難所らしき急坂斜面が控えていた。ただ見た目には、山頂はもうすぐそこ。「指呼(しこ)の間」としか思えない視認距離だ。

間もなく、ある「選択」を迫られた。鎖を手繰り寄せて最短の直線距離をよじ登るのか?それとも迂回路を使うのか?どちらかを選べ!というのだ。

ここで18名いるメンバーの意見が大きく分かれた。体力に自信のある「直線派」と、「急がば回れ派」の2つである。筆者は迷った挙句、後者を選んだ。

少しだけ補足説明するなら、「石鎚山」の最終登山ルートには〃名物〃と言われる「鎖の道」があって、それぞれ「一の鎖」「二の鎖」「三の鎖」と名付けられている。

長さは順に「33メートル」「65メートル」「68メートル」。ただ一旦「鎖の道」に入ってしまうと、「もう後戻りできない!」というリスクも同時に背負うことになる。

悩ましい限りだが、決めないことには前には進めない。各自それぞれの責任で「道」を選んだ以上、同時に全うする義務も負う。何だか、この辺りが「人生」なんだよなぁ…。

ただ、迂回路とて決して楽ではなかった。よくぞまぁ、こんな登山路を拵えたもんだ、などとしきりに感心しながら、ひたすら「頂上」を目指す。

己の体力の限界と苦闘すること約30分。最後の階段を必死の思いで駆け上ると、見事なパノラマ視界が一気に開けてきた。

山頂神社付近は多くの登山客で溢れていた。ひとしきり「達成感」を噛みしめながら、参拝を済ませると、まだ遥か向こうでは尖がった岩肌を覚束ない足取りで歩いている連中がいるではないか?

聞けば、ピークは対岸の「天狗岳」だ、という。ここまで来て頂上を極めない手もあるまい。さらに体力を振り絞ってチャレンジすることに決めた。参加者2名。

巧く説明できないが、例えて言うなら、その山は「削り節」のような形をしていた。岩肌にへばりつくようにしてソロリ、ソロリ。片道15分ほどの「ほふく前進」で最後の岩塊をよじ登り終え、ついに立てた、西日本最高峰!!

ただ、元来「高所恐怖症」の質(たち)なので長くはおれない。再びのほふく前進。途中「怖いもの見たさ」で直角に屹立した岸壁の淵に立つ。

不思議と「恐怖感」はなかったが、霧深い谷底の向こうに、何やら「人影」のようなモノが見えた。後で聞いたら、「ブロッケン」という極めて珍しい気象現象だという。

再び神社前まで引き返して、待機メンバーと合流。やっとのことで「弁当」にありつけると思っていたら、「もう下るよ!」と、リーダーの無慈悲な一言。

「そりゃないべ…」。思わず「谷底」に突き飛ばしてやりたい気分に駆られた。冗談ですよ、冗談!!