「平成新山」に登る③…ナニ、初登山は俺だけかい?
申し遅れたが、当日の参加者はガイド役の九大観測隊を筆頭に、県や市の防災担当者、報道陣など合わせて約40人。
ひとしきり落ち着いたところで周囲を見回してみたら、筆者以外は全員「経験者」のようで、皆さんどことなく余裕の表情を浮かべている。
我が社のT君に尋ねてみると、彼も「もう6回目だ」という。どうやら「初登山」は筆者一人みたいだ。「とにかく落伍せず、ケガなどをして周囲に迷惑をかけないこと!」を、改めて胸に刻んだ。
藪に覆われた通路は折からの雨でヌカるんではいたが、歩けない程ではなかった。途中、途中のポイントで立ち止まっては、清水先生の講義を聞く。
「この石コロは噴火時にここまで飛んで来たものです。中身はまだ熱いまま表面が急速に冷えたためヒビが入っています。これを『パン皮状火山弾』と言います」―。
説明を受けながら、自分が段々と賢くなってきているような不思議な気分に囚(とら)われてくる。もちろん、それが全くの「錯覚」であることは知ってはいるが…。
そうこうしているうちに、「北の風穴」と呼ばれる調査ポイントに到着。さらに少し登った地点が、湯江川源流部の真上付近だという。辺りにはドームの重みではみ出てきた巨石がゴロゴロしていた。
一斉に雲が動き出した。すると視界も一変。見えた!見えた!あれが千々石断層で、手前が田代原。「皆さんがお利口さんだからですよー」。およそ科学者らしくない冗談を飛ばす寺井先生の口調に苦笑する。
ビックリしたのは、空中散布された雑木類の繁殖力。十有余年の歳月を経て、今ではしっかりと大地に根を生やし山肌を支えている。橋口忠美・県島原振興局長の口元が緩んだ。
まっすぐ進めば「鳩の穴」(今では埋没)との岐路となっているT字路を右折。さらに次々と現れる「急坂」をよじ登ること10分。と、突然!といった感じで巨大な岩山が姿を現した。
「ホエーッ、これが平成新山かぁー!」。豆をくらった鳩の表情はまだ見たことはないが、恐らくその時の〃呆(ほう)け面(づら)〃はそんなものだったろう。
「ここから先はハッキリ言って危険です。自信のない人は、ここで待機していて下さい」。松島先生の脅しにも似た警告。一瞬、「そうしようか…」と弱気も起きたが、「ここまで来て諦(あきら)めるのも恥ずかしい」との思いが勝った。
説明では「25分~30分で登頂」という話だったが、行けども、行けども、頂上はまだまだ先方。黄色と赤のマーキングを頼りに必死で歩を進めるが、何分「短脚」がたたる。
幾度かバランスを崩して反(そ)り返りそうになったが、すぐ後方にいてくれた毎日新聞の古賀記者に助けられた。ひょっとして彼は〃命の恩人〃かも知れない。
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