2011/01/19

「雪女」×「他所ゆき男」…馬鹿丸出しの雪中行軍ドライブ

『雪女』と言えば、日本名「小泉八雲」こと、ラフカディオ・ハーン作の怪談に出てくる美形だが、夜半の吹雪の恐ろしさといったら…。

先週末の夜、あの予測された寒波の中を、何をとち狂ったか、筆者はひたすらある「目的地」を目指して疾駆していた。そこが何処なのかは事情があって言えないが、午後9時きっかりに家を出たのは紛れもない事実である。

広域農道を抜け諫早市内に入ると、すでに路面には薄らと白いモノが積もっていたが、用心すれば、走れない程ではなかった。たまに風が止むと、雲間から月明かりさえ見えた。

諫早インターから乗った高速(福岡方面)の走り出しは極めて順調。「この調子だと、早ければ零時過ぎには本州に入れる」と思ったくらいだった。

ところが、東彼杵に入った辺りから様相が一変した。そう、冒頭で述べたように「雪女」の登場を予感させるかのような横なぐりの猛烈な吹雪に襲われたのである。

雪はその後も断続的に降り続いた。途中、給油のため金立のパーキングエリアに立ち寄り、そこで目的地までの「残存距離」を調べたら、まだ700余キロ。

「どうせ明日は休みだし、遅くとも昼前には着くだろう」と高を括った。幸いにして、天候は小康状態となったので、通常と変わらぬくらいのスピードで先を急いだ。

「異変」を感じたのは福岡インターを過ぎた辺りから。俄かに視界が塞がり始め、段々と睡魔も襲い始めてきた。

それでも馬鹿の真骨頂を遺憾なく発揮。「どうにかなるさ」との希望的観測のもとハンドルを握り続けた。ただ、「さすがにこのままだとまずい」と気付いたのは、九州最北端のめかりパーキングの直前。

トイレ休憩の後、作戦を練り直そうと愛車に戻ったが、「小月~小郡間は冬タイヤでなければダメ」との道路情報。「そんなら地道を走れば…」となかなか諦めもつかなかったが、一方で「退却も勇気」と、思い直す気持ちも。

しばらくの逡巡の後、対岸の下関インターで下車。料金千円。そのまま関門トンネルを引き返して、再び九州へ。門司市内で一泊しようかなとも思ったが、取りあえず帰途につくことに。

結論を言えば、古賀のパーキングで2時間程仮眠。高速道路は路面凍結のため筑紫野インターで下され、佐賀、鹿島などの地道を通って自宅に辿りついたのは朝の9時きっかり。

家では母と家人が遅めの朝食を摂っていた。「オイ、馬鹿よね?」と聞いたら、2人とも大きく肯いて炬燵を指差した。

「雪女」ならぬ「他所ゆき男」の元気もプライドもそこで溶けて流れてしまったという、何ともお粗末な「雪中行軍」の一幕でした。