2011/03/03

小人閑居して不善…改めて思う〃世の無常〃

「鬼のカクラン」と呼ばれるほど頑健でも丈夫でもないが、一昨日はどうにも具合が悪くて、仕事を休んでしまった。決して「サボリ」ではない。れっきとした「病欠」である。
 
診察の結果は「腸炎」。すでに社員の半数ほどが罹患しているので「インフルエンザ間違いなし!」と踏んで病院の門を叩いたのだが、またしても〃流行〃に乗り遅れてしまった感じだ。

実は、インフルエンザの検査を受けたのは今年に入って2度目である。用心のために、予防注射は接種していたのだが、周囲の環境が環境なだけに、少しでも微熱や咳が続くと疑念はすぐに深まる。

すべてにおいて我慢強い性質(たち)ではないので、痛みを伴う検査は、他人様以上に苦手である。まず、胃カメラの類いを受け付けない。進入口の異なる大腸検査も出来たら避けたい。

最近ではこれらに、インフルエンザ検査が新たに加わった。経験された方ならお分かりいただけると思うが、細い綿棒のようなもので鼻腔奥のデリケートな部分を容赦なく〈ツンクジラレル〉のである。

時間こそ短いが、あの瞬間の「辛さ」と言ったら…。別段、思い出も何にもないのに、涙がとどめなくボロボロとこぼれ落ちてくる。

それにしても日がな一日床(とこ)に伏せっていると、退屈この上ない。日曜や祭日に何もすることがなくて畳の上でゴロゴロしているのとは、まったくもって異質の空間だ。

テレビもそのうちに飽きてくるし、読書にも限度がある。かと言って、平日・昼の日中に戸外をふらつくのも傍目(はため)(世間様)にどう映るかと思えば、つい二の足を踏む。

そんな宙ぶらりんな心境の中で思い当ったのが「小人(しょうじん)閑居(かんきょ)して不善(ふぜん)を為(な)す」という古い諺。小人とはすなわち、この私自身のことに他ならない。

しかし、たまに休むことがそんなに悪いこととは思えないが、やはり人間は働いてナンボの世界。裏を返せば、哲学者でない普通の人間は、悪事を働かぬよう目の前の仕事に没頭せよ!ということか。

そう言えば、同趣旨の諺が英語にも――。確か「ドゥーイング・ナッシング・イズ・ドゥーイング・イル」とか言った。直訳すれば、「何もしないことは悪いことをすることと同じ」という意味だ。

まあ、洋の東西を問わず、人生を賢く送っていく上での「ポイント」が簡潔な表現でまとめられていることに、改めて感嘆するばかりだが、ソレをなかなか実践できないのが「人間」という憐れな存在。

ニュージーランドの地震災害や、中東・北アフリカの民衆蜂起による内乱のニュースを仄聞(そくぶん)しつつ、改めて「世の無常」に思いを馳せる。そして、その中心にはいつも、弱くて、厄介な「人間」がいる。