2011/08/21

大鵬似の佐々木監督…「白秋」に向け何を植えよう?

「女」を書かせたらこの人の右に出る者はいないと言われる、吉行淳之介さんの小説に、『驟雨』(しゅうう)という作品がある。昭和29年に「芥川賞」を受賞した名作だ。

学生時代に読んだのだが、筋立てはともかくとして、極めて〃官能的〃な描写の数々にひたすら想像力を膨らませて頁をめくっていたことだけは覚えている。当時は今よりもっとアホだったから、まず「驟雨」の意味を知らなかった。

有体に言うと、「夕立」とか「にわか雨」のことだそうだが、事実、雨の降り方にも色々ある。昨今の「ゲリラ豪雨」など論外としても、霧雨の状態を指す「こぬか雨」とは何と素敵な響きか。  

だから、歌詞にもなるのだろう。筆者がまだ若かりし頃に流行った2つの作品を思い出す―。

〈こぬか雨に 芯まで濡れて 消えたあなたは 何処にいるの♪〉=ちあきなおみ『私という女』。〈こぬか雨降る 御堂筋♪」=欧陽菲菲『雨の御堂筋』。

前置きが長くなってしまったが、今年の夏は「盆」を挟んで、もうウンザリするほどの長雨続きだ。こうなったら「矢でも鉄砲でも持って来い!」といった気分にもなりかねないが、「鉄砲雨」だけはご免こうむりたい。とにもかくにも、もうこれ以上の「災害」は要らない。

ところで、皆さんもすでに感じられていることと思うが、このところめっきり蝉の鳴き声を聞かなくなった。まさに〈おどみゃ 盆ぎり 盆ぎり♪〉の『五木の子守唄』を地で行く変わり身の早さだ。

昨夜、久方ぶりに島原城周辺を散歩していたら、堀端沿いはもうすっかり秋の気配。リーン、リーン…という「虫の音」が疲れた耳に心地よかった。

中国の古典では、季節を「色合い」で表す、という。つまり、春は「青」で「青春」、夏は「朱」で「朱夏」…といった具合に。

その「青」の話でいけば、戦場カメラマンの渡部陽一さんの好きな色は「青です」だそうだが、筆者はテレビ等でこの方の顔を見るたび、俳優の篠田三郎さんに良く似ているな、と思う。

だからといって、どうこうといった話ではないのだが、今やすっかり〃時の人〃となった女子サッカー「なでしこジャパン」監督の佐々木則夫さんは、大横綱だった大鵬関と瓜二つだ。特に目の具合が。

色んな記事を読むと、同監督は病身の奥様のことを慮って一時期はサッカー界から身を引いたそうだが、そうした〃苦労人〃だけに、先のワールドカップでの優勝は余計に喜ばしく思う。

さて、これから迎える秋の色は「白」。すなわち「白秋」である。我が事務所の玄関先を見やると、サルビアをはじめ「朱系統」の花が多いが、これから何を植えよう…。迷ったら「原点」(白紙)に戻るしかないか!