ハスの命は短くて?…人生に失敗は付き物だが
「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」―。作家、林芙美子(1903年~1951年)が好んで色紙などに書いた言葉だそうだ。
何ともやるせないその響きに、節電列島の猛暑がかぶさる。そして、わずか2日間だけ華麗な花を咲かせた挙げ句、その後は固く花弁を閉ざしたままでいる、我が家のハス一輪。言葉が見つからない…。
数日前の早朝、偶然目に留まったその花は、淡いクリーム色をしていた。型は小さくて、今を盛りと堀端で咲き誇っている絢爛豪華な大ぶり品種とは明らかに趣きが異なる。
写真でお見せできないのが残念だが、井戸水が滴り落ちる、苔の生えた年代物の石臼がその「生」(せい)の舞台である。仲間と言えば、土曜夜市で仕入れてきた金魚の赤ん坊4匹。こちらはチョロチョロと落ち着きがない。
こんなことならビデオカメラに一部始終を収めておけば良かったのに…とホゾを噛んだが、時すでに遅し。典型的な「後の祭り」である。
ここで失敗点を整理しておくと、いわゆる「先のばし癖」が招いた「災い」(ちょっとオーバーか)とでも言おうか。その時すぐに対応しておけば、ひょっとしたら「開花音」まで拾えたのかもと思うと、残念でならない。
浄土真宗の始祖である親鸞聖人は「明日ありと思う心のあだ桜 夜半に嵐の吹かぬものかは」と詠まれたそうだが、こういう苦い経験をして改めて、その言葉の奥深さを味わうことができる。
一方、経済用語で言うなら、やるべき時にやらないのは「機会損失」とされる。別な例えをするなら、茶道の世界の「一期一会」というところか。
まあ、これに限らず日々反省することばかり多いのだが、他方で新たな発見もある。水面を覆う葉っぱに隠れたような恰好で、秘かに二輪目がツボミをふくらまし始めていたのだ。
こうなると、根が単純なものだから、俄然勇気が湧いてくる。今度は絶対に失敗しないぞ!と固く心に誓って、毎朝のように臼の回りをウロウロ。
とにかく、人生に「失敗」は付き物だ。誰でも必ず失敗する。でも、そこから立ち上がる姿勢こそが大きく問われるのである。
〈ドブに落ちても根のある奴は いつかは蓮(ハチス)の花と咲く 意地は張っても心の中じゃ泣いているんだ兄さんは♪〉
そっ、そうなんだ!ハスの花から学ぶことは多いぞ。それでこそ「極楽浄土」を象徴する、有難い花である。
「フーテンの寅さん」こと渥美清さんが亡くなったのは、今からちょうど15年前の8月4日だとか。
「おい、清水、お前さん相変わらずバカかい?」。蝉しぐれの間隙をぬって、どこからともなく、そんな声が聞こえてくるような気がした。
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