脳には驚きが必要…自信を裏付ける努力を!
講師としての茂木健一郎さんの語り口は、いわゆる〃功成り名を遂げた〃感のある大先生のそれとは一味も二味も違う。気さくで、それでいて示唆に富んでいる。
交友関係も幅広いようで、学者、文化人にとどまらず、音楽仲間の布袋寅泰さんをはじめ芸能界にもしっかりと根を張っているようだ。そのあたりが若者たちからも熱烈な支持を得ている背景かも知れない。
閑話休題。前回でも記したように、人間にはそれぞれ〃能力〃というものがあって、どうしても出来ないことが誰にもある。茂木さんは「それに気づいてはじめて人は他人にやさしくなれる」と説いた。
さて、ここからが「脳科学者」としての話になるが、茂木さんが例として明かすオリンピック女子マラソンのメダリスト(バルセロナ銀、アトランタ銅)、有森裕子さんの〃秘話〃。
もともと有森さんはランナーとして才能に溢れていた〃逸材〃でも何でもなかった。いわばごく普通の選手であった。それがどうして世界の頂点を極める寸前まで登りつめることが出来たのか?
〃育ての親〃の小出義雄監督によれば、有森さんは常に「根拠のない自信」を持っていた、という。その姿勢は学生時代から実業団チームに入るまで、終始変わらなかった。
日本体育大学を経て有森さんが志望したのは、小出監督率いるリクルート。しかしながら、さして才能もありそうにない有森さんは〃入門〃を断り続けられたのだそうだ。
それでも諦めない有森さんが取った行動は、同監督の行く先々に姿を現して、あの愛くるしい笑顔で手を振ることだった。
その甲斐あって、やっとリクルート入りを果たした有森さん。だが、その後に待ち受けていたのは、50キロを走った翌日にも5千メートルを10本などといった、いわゆる練習漬けの日々。
ただ、これは俗に言う〃シゴキ〃なんかではなかった。さすがに小出さんは〃名伯楽〃だけあって、その裏できちっとした理論付けを行っていた。
茂木さんによれば、そうした荒業は「マッスル・コンピュージョン」と呼ばれ、いつの間にか体そのものを本気にさせる。つまりその結果、いついかなる条件下でもベストが出せるようになる、と。
端折った言い方になるが、脳を活性化するにはサプライズ(驚き)が必要。勉強も決められた通りにダラダラやるのでなく、時には「集中して大量に」やることが効果的。
結論。脳の手入れは植物と同じで、(人間は)急には変われない。諦めたら花は咲かない。毎日、毎日手入れを怠らないこと。そして時に驚きを。
有森さんの成功の秘訣は「根拠のない自信」に対して、それを裏付ける「(不断の)努力」があったればこそ、だった。
-おわり-
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