問われる〃誘導力〃…具体的に物語性をもって
会場の「くまもと森都心プラザ」はJR熊本駅のすぐ真向かい。筆者が到着した頃にはすでに満杯状態で、「九州横軸」の連携強化にかける関係者の並々ならぬ熱気で溢れていた。
シンポジウム全体の概略については、すでに16日付けの本紙1面で紹介されているので重複は避けるが、何より基調講演に立った清水愼一氏(立教大学観光学部特命教授・JR東日本出身)の話がすこぶる面白かった。
同氏が九州新幹線波及効果の〃成功事例〃としてまず取り上げたのは、在来のJR三角線を走る『A列車(特急)で行こう』という船便との連携企画。
宇土~三角間を結ぶ同線もご多分に漏れず〃赤字続き〃のローカル路線だったが、イルカウォッチングなどが楽しめる「天草宝島ライン」との組み合わせで予想を大幅に上回る人出を集めているそうだ。
人気の秘訣は幾つかあろうが、何と言っても、ジャズのスタンダードナンバーに引っかけたネーミングの妙がある。もちろんこれは筆者の個人的な思いだが、「A」とは取りも直さず「天草」の頭文字だ。
この基調講演の後に、熊本市の幸山政史(せいし)市長が「阿蘇の『ア』、熊本の『ク』、天草の『ア』を取って『熊本アクアライン』でさらに知名度アップを!」と、すかさず柔軟に応じていたのには感心した。(※アクアとは英語で水の意味)
次いで紹介された2番目の〃成功事例〃は鹿児島県の指宿線。この路線は新幹線終・発着駅の「鹿児島中央」と砂蒸し風呂で有名な「指宿温泉」をつなぐこれまた典型的なローカルラインだが、何と開業効果は31.5%増にも及んでいるという。(※正式には指宿枕崎線)
こちらの人気商品は「指宿のたまて箱」と呼ばれる全席指定の特急列車(新生・博多駅で一躍有名になった水戸岡鋭治氏がデザイン)で、日中3往復しているそうだ。
講師がこの日発したキーワードは幾つかある。中でも筆者の耳にこびりついて離れないのは、我々がふだん何気なく使っている「具体的」とか、「物語」とかいった表現だ。
先の2事例に基づいて話を敷衍(ふえん)するならば、いずれの場合も、次なる観光地へグイグイと誘導していく「ストリー性」(=物語)で溢れている。
そして、発想そのものが極めて「具体的」かつ「スピーディ」だ。より直截に言うなら、新幹線がかつて経験したこともない大量の客を〃そこ〃まで運んできてくれている。
これをみすみす見逃しているようでは、何の商売をしてもうまくいくはずがない。事を島原の話に戻すなら、関西や博多方面から新幹線に乗って熊本駅に着いた観光客にどう有明海を渡らせるか(誘導)。
言い換えるなら、「旅のロマン」をいかに演出してみせるか。材料には事欠かないと思うのだが…。
-つづく-
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